研究課題/領域番号 |
15K18651
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
浅井 秀太 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (30723580)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エフェクター / 抵抗性遺伝子 / 植物・病原菌相互作用 |
研究実績の概要 |
植物病原菌はエフェクターと呼ばれる病原性タンパク質を植物細胞内に注入し、植物の防御反応を抑制することで、感染に成功する。一方、抵抗性を示す植物は、抵抗性(R)遺伝子産物を用いてエフェクターを認識し、防御応答を誘導する。つまり、R 遺伝子により認識されるエフェクターは本来強力に植物の抵抗反応を抑制する能力を有していること、および認識を回避するように進化してきたことが考えられる。本研究では、新規の病害防除法の開発を目指し、R遺伝子RPP4により認識されるべと病菌エフェクターAvrRPP4 が標的とする宿主側の因子を同定・解析することにより、AvrRPP4の“植物免疫抑制機構”、ならびに“認識回避機構”の解明を目的とした。 これまでに、シロイヌナズナのR遺伝子RPP4により認識されるべと病菌エフェクターAvrRPP4を同定し、AvrRPP4は宿主細胞内で細胞質と核内、特に核小体に局在すること、および核内に局在することがRPP4による認識に必要であることを明らかにしていた。平成27年度、RPP4による認識を回避しているべと病菌分離株Hind2由来のAvrRPP4アレル(AvrRPP4Hind2)に注目し、詳細な解析を行った。その結果、AvrRPP4Hind2ではAvrRPP4が持つ機能的な核局在シグナル配列(NLS)内に遺伝子変異が見つかり、その変異により宿主細胞内局在を変化させることで、RPP4による認識を回避していることを明らかにした。今後、AvrRPP4の病原性因子としての機能を明らかにするために、相互作用因子(標的タンパク質)を同定し、解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、病原菌エフェクターAvrRPP4の植物免疫抑制機構および認識回避機構の解明を目標としている。上述の通り、AvrRPP4の認識回避機構については、詳細な解析により明らかになってきており、AvrRPP4の同定から認識回避機構の内容をまとめた形での執筆を始めている。AvrRPP4の植物免疫抑制機構解明に向けては、AvrRPP4過剰発現シロイヌナズナを作製し、現在病害抵抗性の評価を行っている。今後、AvrRPP4の相互作用因子(標的タンパク質)を同定し、解析を進めて行く。
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今後の研究の推進方策 |
AvrRPP4の植物免疫抑制機構の解明に向けて、作製したAvrRPP4過剰発現シロイヌナズナにおける病害抵抗性の評価に加えて、過剰発現シロイヌナズナを用いた免疫沈降・質量分析法によりAvrRPP4の宿主相互作用因子(標的タンパク質)を同定する。また、宿主相互作用因子の過剰発現株・欠損変異株において、エリシターにより誘導される抵抗反応、および病害抵抗性の評価を行っていく。 平成27年度までの研究で、RPP4による認識を回避しているべと病菌分離株Hind2由来のAvrRPP4アレル(AvrRPP4Hind2)は、AvrRPP4が持つ機能的な核局在シグナル配列(NLS)内に遺伝子変異が見つかり、その変異により宿主細胞内局在を変化させることで、RPP4による認識を回避していることを明らかにした。AvrRPP4の本来の病原性(植物免疫抑制)因子としての機能にも核局在が必要であり、直接宿主植物の転写制御機構などを標的としている可能性が考えられるため、AvrRPP4Hind2の病原性因子としての機能について非常に興味深い。現在、AvrRPP4Hind2過剰発現シロイヌナズナを作製中である。今後、AvrRPP4Hind2過剰発現シロイヌナズナにおいて病害抵抗性の評価を行い、上述のAvrRPP4過剰発現シロイヌナズナの結果と差があるようであれば、AvrRPP4の宿主相互作用因子との関連について詳細に調べていく。 以上の研究を通して、AvrRPP4の植物免疫抑制機構を明らかにし、論文として報告する。また、上述のAvrRPP4の同定から認識回避機構の内容については、本年度の早い段階での論文の投稿・受理を目指す。
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