本年度は、トマト根腐萎凋病に対する生物防除微生物であるPaenibacillus sp. 42NP7株が産生するキシラナーゼに着目してエリシター活性を検証した。 Paenibacillus sp. 42NP7株は4種類以上のキシラナーゼアイソザイムを産生するが、このうち、トマト根部を含む培地で培養した際に培養液中に高度に分泌される精製キシラナーゼを用いた。本精製酵素の部分アミノ酸配列を解析し、得られた配列をもとに縮重プライマーを設計し、PCR法によりキシラナーゼ遺伝子全長を取得した。本酵素の推定アミノ酸配列はP. rhizosphere由来のglycoside hydrolase family 11キシラナーゼと高い相同性を示した。精製酵素を用いて、トマトリーフディスクでのスーパーオキシド(O2-)生成誘導活性を調査したところ、対照区(緩衝液処理区)よりも高い誘導活性が検出された。また、精製酵素をトマト苗の根部に処理することで複数の感染特異的タンパク質(PRタンパク質)をコードする遺伝子の発現量が対照区にくらべ増加した。以上から同キシラナーゼはO2-生成エリシターであることが示唆された。 これまでエリシター活性を持つキシラナーゼとしては、Trichoderma属糸状菌由来の特異なアミノ酸配列を有するキシラナーゼで知られているが、そのアミノ酸配列を持たないPaenibacillus属細菌由来のキシラナーゼも同様にエリシター活性をもつことが示された。
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