研究課題/領域番号 |
15K18654
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宇高 寛子 京都大学, 理学研究科, 助教 (60534609)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生活史 / 陸生貝類 |
研究実績の概要 |
【生活史】マダラコウラナメクジLimax maximusは2006年に日本への移入が初めて確認された新しい移入種である。しかし、現在の分布や日本での生活史は不明である。生活史を明らかにするために、茨城県石岡市での定期採集を行った。採集した個体の体重・陰茎発達の有無・生殖腺(両性腺・タンパク腺)の重量を元に生活史を推測したが、それらのみでは不十分であったため、切片を作製し精子の有無も調べた。その結果、精子は陰茎発達後の短い期間しか両性腺内にみられなかった。これらのことは、マダラナメクジの交尾期間と産卵期間は一致せず、短期間に集中して交尾をすると考えられる。 【成長と性成熟におよぼす光周期と温度の影響】アメリカ個体での先行研究から、マダラコウラナメクジの成長や性成熟は光周期によって制御されているとが明らかになっている。光周期への反応が生活史制御に重要であるが、日本に移入している個体の光周反応は不明である。このことを明らかにするために、飼育個体から卵を得、飼育することを計画していた。しかし、成熟個体が実験室で産卵しないため、野外で採集した卵を研究室で孵化させ、飼育を行っている。現在、短日または長日条件で一定期間飼育したもの、または途中で条件を変更した場合等、さまざまな条件下で飼育を行っている。 【温度耐性】実験に多数の個体が必要であるが、飼育条件下での産卵にいたっておらず個体数の確保が難しい状況である。そのため、野外個体での実験を計画中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【生活史】性成熟が始まる時期は明らかになったが、実験結果から正確な生活史を知るためには産卵時期を特定する必要が生じた。 【成長と性成熟におよぼす光周期と温度の影響】飼育は順調に進んでいる。 【温度耐性】実験条件での飼育では十分な個体数を確保できていないため、実験開始が遅れている。 【系統解析】サンプル収集がやや遅れているが、DNA抽出等をするための実験準備は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
詳細な生活史解明のために野外と温度、日長が同じ条件で飼育をし、産卵時期の特定を行う。引き続き、さまざまな条件での飼育を行い、光周反応について明らかにする。 温度耐性の実験を行うために必要な個体を野外から5、6月に未成熟個体を採集し、長日または短日条件で飼育し温度耐性を比較することとする。 採集地を増やしつつ、DNA抽出等を行い、早急に分子系統解析も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していたDNA系統解析が遅れ、シーケンス等にかかる費用が使用されていないため。また、飼育等にかかる人員の雇用が遅くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
飼育実験の計画が遅れているため、当初予定してたよりも飼育等を補助する人の雇用を次年度まで継続する。また、DNA解析もすすめるため、最終年度に計画通りの助成金額使用となる見通しである。
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