2006年に移入が確認されたマダラコウラナメクジについて、まず茨木県での定期的な野外採集を行い生活史を調べた。体重と性成熟の指標となる陰茎発達の有無、両性腺(卵母細胞と精子の慮方を作る器官)と蛋白腺の重量を測定した。その結果、本種は茨木県ではほぼ1年中陰茎発達をした個体がみられるが、両性腺は7・8月、蛋白線は9月から2月に発達していた。両性腺が発達している期間が短いため、両生腺のパラフィン切片を作製し、精子形成の有無を確認したところ、両性腺内での精子形成は短い期間におきていることが示唆された。 先行研究により、アメリカの個体群は短日条件から長日条件への日の長さの切り替えが性成熟を誘導することが知られている。研究室での繁殖がうまく行かなかったため、野外で採集した卵を実験室で孵化させ、それらの個体を用いて先行研究と同様の実験を行った。その結果、茨木県の個体でも性成熟は長日条件によって誘導されることが明らかになった。ただし、先行研究での結果ほど日長の切り替えによる効果は見られなかった。この違いが個体群によるものかどうかはさらに研究が必要である。 現在、複数の地域でマダラコウラナメクジが確認されている。これらのCOI遺伝子を比較することで遺伝的多様性の有無を調べ、日本への移入が1回と言えるかどうか、また、海外個体のデータと比較することでどの地域から日本へ移入しかた推定を試みた。海外個体のデータが少ないため、厳密にどの地域から移入したかを明らかにすることはできなかったが、日本へ移入したのは複数個体であることが明らかになった。
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