本研究では、放射性同位体トレーサー法と連続凍結切片法を組み合わせることにより、登熟過中の米内部における重金属および微量必須元素の三次元分布を網羅的に可視化することを目指した。 既に予備的結果を得ていたカドミウム(トレーサー:Cd-109、以下()内はトレーサーを示す)については、追実験によって動態の再現性を確認した。また、同族必須元素である亜鉛(Zn-65)についても同栽培条件におけるデータを取得し、開花から登熟までの動態比較を行った。この結果、カドミウムと亜鉛ともに登熟中期に胚乳中央部に高濃度に集積する傾向を示すが、亜鉛濃度が登熟期に低下する一方、カドミウムは胚乳中に残留する現象が確認できた。これら2元素に関する研究結果の詳細に関しては2016年度日本土壌肥料学会佐賀大会にて発表した。 さらに、これら2元素の動態の背景にあるメカニズムを推定するべく、一部のトランスポーターが共通している鉄(Fe-55)、マンガン(Mn-54)のトレーサー試験、および種子のシンク能のマーカーとなるスクロース(C-14)とのダブルトレーサー試験を行ない、種子試料を得た。 また、米内部の動態における既往の知見が乏しい鉛(Pb-210)、コバルト(Co-60)、ニッケル(Ni-63)、ヒ素(As-74)、水銀(Hg-203)についても新規に動態の可視化を試みた。この結果、鉛、コバルト、ニッケルについては予備試験によって可視化条件を確立し、開花から登熟までの各段階における種子試料を得た。現在は得られた種子試料中のトレーサー分布解析作業を進めており、結果については2017年度日本土壌肥料学会仙台大会での発表を予定している。
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