イネ科植物は、必須元素である鉄を土壌から獲得するために、三価鉄キレーターであるムギネ酸類を根から根圏へ分泌し、三価鉄をキレートして可溶化し、三価鉄・ムギネ酸類錯体として鉄を獲得する。ムギネ酸類は、植物体内において鉄と結合し、鉄移行や可食部への鉄の蓄積に関与する。また、ムギネ酸類生合成の中間物質であるニコチアナミン(NA)も植物体内における鉄移行を担う。細胞内においても、ムギネ酸類やNAは細胞質から細胞内小器官や細胞外への鉄輸送に関与していると考えられる。ムギネ酸類やNAを介した鉄の移行や輸送は特有のトランスポーターにより制御され、植物体内の鉄恒常性を維持しているがその詳細は不明である。本申請研究は、申請者らが単離・同定したムギネ酸類及びNAの分泌を担うトランスポーターTOM・ENAファミリーの機能解析を行うとともに、ムギネ酸類生合成の場であると推定されるムギネ酸顆粒の細胞内小胞輸送の解析をことで、ムギネ酸類及びNA分泌の分子機構を解明し、植物におけるムギネ酸類やNAを介した鉄移行、鉄恒常性維持機構を分子レベルで理解することを目指した。 R1年度は、TOM1やENA1とムギネ酸顆粒の関係について解析するために、TOM1あるいはENA1と赤色蛍光を発するRFPとの融合遺伝子をOsNAS2-sGFP導入イネへアグロバクテリウム法により遺伝子導入し、複数の再分化体を得た。しかし、遺伝子の導入を確認できず、顕微鏡観察までは至らなかった。
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