土壌微生物の機能発現は、土壌団粒が形成する孔隙の大きさ、好気・嫌気条件、利用可能な養分の有無などの、微生物の微小生息域(マイクロハビタット)の環境状態に影響されるが、土壌団粒内の微小領域について知見が乏しい。そこで本研究は、土壌微生物の生態や微生物活動によって駆動される土壌物質循環の解明や、微生物機能を用いた技術応用発展を目指し、土壌団粒内の微小環境について基礎的知見を得ることを目的とした。 平成27年度は主に放射光施設を用いたX線顕微鏡(STXM)とX線吸収端微細構造(NEXAFS)を用いて3μm程度の土壌団粒について微小領域の元素マップおよび化学種の分析を行った。 平成28年度は、分析対象元素にアルミニウムを追加してSTXM-NEXAFSによる分析を継続し、X線透過が難しい数マイクロ~ミリメートルスケールの団粒の観察方法について検討を行った。また、ミミズ等の大型土壌動物の飼育実験により得られた土壌団粒について、微生物酵素活性試験、炭素資化能について分析した結果、ミミズの関与した団粒は微生物の活性が高いと同時に微生物群集が異なる可能性が示唆された。 平成29年度は、ミミズ等の大型土壌動物の飼育実験を継続し、得られた団粒のX線マイクロトモグラフィーによる土壌孔隙分布の可視化を行った。また、三宅島2000年噴火による新鮮火山灰の初期土壌生成過程に着目し、2007年から2017年に採取した土壌試料を用いて、STXM-NEXAF分析により、サブミクロ団粒の経時変化について分析を行った。
|