研究課題/領域番号 |
15K18664
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
松岡 聡 埼玉大学, 理工学研究科, 講師 (90509283)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グリセロ糖脂質 / 枯草菌 / 膜タンパク質 / 細胞形態 / ECFシグマ / UgtP / アンチシグマ |
研究実績の概要 |
枯草菌のグリセロ糖脂質合成酵素UgtPは、ジアシルグリセロールにUDP-Glcを用いてグルコースを段階的に転移するグルコシルトランスフェラーゼである。UgtPによって合成される モノ、ジ、トリジアシルグリセロールは細胞膜の約10%を占める。ugtP破壊株は、さいぼうが太く短くなり、ECFシグマ因子(SigM、SigV、SigX)の脱抑制が見られた。ugtP破壊によって、細胞に様々な影響が見られることから、糖脂質が枯草菌細胞で重要な役割をしていることが示唆された。 はじめに、細胞形態に重要な糖脂質分子種を明らかにするため、Acholeplasma laidlawii由来の糖脂質合成酵素遺伝子(mgs:モノジアシルグリセロール合成酵素遺伝子、dgs:ジグルコシルジアシルグリセロール合成酵素遺伝子)を枯草菌糖脂質欠損に導入した。その結果、mgsの導入で形態異常が回復し、ECFシグマの脱抑制も抑制された。また、糖脂質欠損時にはアンチシグマの分解は見られなかったことから、糖脂質がアンチシグマの機能を補助していることが示唆された。 ジグルコシルジアシルグリセロールは枯草菌の細胞外マトリックスであるリポテイコ酸合成の基質(膜アンカー)であることから、糖脂質欠損とリポテイコ酸欠損時におけるECFシグマの活性を解析したところ、二つの欠損がECFシグマの脱抑制に相加的に働くことを明らかにした。また、糖脂質を欠損すると、LTAの構造が変化することが示唆された。 枯草菌の細胞形態維持には、二成分制御系WalK-RとSigIが協調的に働くことが報告されている。これら因子の制御における糖脂質の影響を解析したところ、糖脂質の欠損で、WalR-KとSigIの活性が上昇することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要にもあるように、本研究課題の遂行によって枯草菌の糖脂質が持つ様々な生理機能を明らかにした。さらに研究成果を総説としてまとめた。 また、下記の1について論文を投稿した。2については投稿準備中である。 1.ジグルコシルジアシルグリセロールは枯草菌の細胞外マトリックスであるリポテイコ酸合成の基質(膜アンカー)であることから、糖脂質欠損とリポテイコ酸欠損時におけるECFシグマの活性を解析したところ、二つの欠損がECFシグマの脱抑制に相加的に働くことを明らかにした。また、糖脂質を欠損すると、LTAの構造が変化することが示唆された。 2.枯草菌の細胞形態維持には、二成分制御系WalK-RとSigIが協調的に働くことが報告されている。これら因子の制御における糖脂質の影響を解析したところ、糖脂質の欠損で、WalR-KとSigIの活性が上昇することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
より分子レベルでの解析を加速させるためにも、これまでの分子遺伝学的な手法に加え、生化学的な手法を導入した新たな実験系を構築中である。具体的には、対象とするバクテリアの膜タンパク質について、リポソーム・バイセル・ナノディスクを組み合わせたインビトロ翻訳系でタンパク質を調製し、対象タンパク質の機能発現における脂質分子種の役割を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在投稿中・投稿準備中の論文の諸経費(英文校正費・論文掲載費)のため、また予想される追加実験のために次年度使用額が生じた。
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