研究課題/領域番号 |
15K18670
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小笠原 寛 信州大学, 学術研究院繊維学系, 助教 (30535232)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオフィルム / 大腸菌 / アミロイド線維 / Curli線毛 / CsgD / CsgA / 転写因子 |
研究実績の概要 |
自然環境中の多くの細菌種は、細胞外多糖やアミロイド線維といった固体表面や細胞同士の付着、及び外界環境に対する防護壁としての役割を担う因子群から構成されるバイオフィルムを形成することが知られている。細菌のアミロイド線維形成抑制の分子機構の解明は、バイオフィルム形成阻害剤開発に繋がる有望な情報を提供する可能性を秘めている。H28年度は、(1)csgBA プロモーター直接制御転写因子による転写制御機構の全容解明、(2) 機能未知転写因子 YehTの標的遺伝子の同定と活性化シグナル分子の解明、(3) CsgD に制御される Curli 線毛形成阻害因子の機能解明を目指し研究を実施した。(1)については、H27年度に引き続き、csgBAプロモーターに結合が見られた転写因子の高発現プラスミドコレクションを用いてcsgBA発現への影響を調べた結果、顕著な効果を示す新規転写因子の同定には至らなかったものの、現在までに複数の転写因子による遺伝子発現への影響が確認された。(2)については、機能未知転写因子YehTの新規標的遺伝子の同定を目指してGenomic SELEX解析を実施したが、新たに結合親和性の高い領域を見出すことはできなかったため、トランスクリプトーム解析データを元に、新規標的遺伝子候補を探索した。(3)については昨年度の研究において同定した新規Curli線毛形成阻害タンパク質の機能解明を目指し、細胞内における局在部位の確認と、相互作用タンパク質の探索を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要にある通り、csgBA発現へ影響を与える転写因子が複数見出されたことから、これら転写因子のバイオフィルム形成への関与と新たなバイオフィルム形成阻害のターゲットとしての可能性が期待された。また、トランスクリプトーム解析データから複数の新規標的遺伝子候補が見出されたため、これら標的遺伝子機能を参考にH29年度も引き続きYehU/YehT系を活性化するシグナル分子の探索を行う。また、H27年度の研究で新規に同定したCurli線毛形成阻害タンパク質は、CsgAの凝集体形成阻害活性を有するだけでなく、csgBA発現を顕著に抑制することが明らかにされたが、H28年度の研究において特定の転写制御機構の関与を示唆するデータが得られてきており、現在、これらタンパク質間相互作用の解析を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通り、研究を推進する。H28年度までにcsgBA発現制御への関与が明らかとされた転写因子のうち、特に機能未知転写因子について優先的にGenomic SELEX法またはChIP-seq法を用いた標的遺伝子の探索を実施する。また、H28年度までに見出されたCsgDに制御される新規Curli線毛形成阻害因子として見出されたタンパク質のCurli線毛形成抑制および、csgBA発現制御に関わるドメインの探索を行う。さらにそのX線結晶構造解析を行うために、新規Curli線毛形成阻害タンパク質の精製、純化を試み、結晶化条件の検討を行う。
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