研究実績の概要 |
自然環境中の多くの細菌種は、細胞外多糖やアミロイド線維といった固体表面や細胞同士の付着、及び外界環境に対する防護壁としての役割を担う因子群から構成されるバイオフィルムを形成することが知られている。細菌のアミロイド線維形成抑制の分子機構の解明は、バイオフィルム形成阻害剤開発に繋がる有望な情報を提供する可能性を秘めている。H29年度は当初計画通り、(1)csgBAプロモーターを制御する機能未知転写因子の機能解明、(2)CsgDに制御されるCurli線毛形成阻害因子の活性部位の同定、さらにH28年度に引き続き(3)YehU/YehT系を活性化するシグナル分子の同定を目指し研究を行った。(1)については、PS-TF screeningによりcsgBAプロモーターへの特異的な結合が確認された機能未知転写因子のうち、顕著なcsgBA発現抑制効果を示した機能未知転写因子1種類についてGenomic SELEX法を行い、csgBAプロモーターを含む複数の標的遺伝子の同定ができている。現在、これら標的遺伝子発現制御機構の解明、およびこの機能未知転写因子が感知するシグナル分子の同定を試みている。(2)についてはCsgDに制御される新規Curli線毛形成阻害因子YccTのCsgA凝集阻害活性とcsgBA発現制御に関わる機能ドメインの探索、およびcsgBA発現に関わる転写制御機構との相互作用の有無について確認を行っている。(3)については、YehU/YehTの特異的シグナル分子が他グループより先行して論文が報告されたため[Behr et al.,Sci Rep. 2017,7(1):1388,Vilhena et al., J Bacteriol. 2017,200(1),e00536-17]、現在、これら情報も参考に、YehT/YehU依存的なcsgDおよびcsgBA発現制御解析を続けている。
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