研究課題/領域番号 |
15K18672
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
笹野 佑 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90640194)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CRISPR-Cas / Chromosome engineering / Yeast |
研究実績の概要 |
微生物を用いた有用物質の生産はバイオテクノロジーの重要なテーマの一つである。近年、ストレス耐性等の有用形質は多くの場合、非常に多数の遺伝子が関与していることが明らかになってきた。しかし、従来の菌株育種技術では一度に操作できる遺伝子の数はごく少数に限られており、大規模なゲノム育種は困難であった。そこで本研究課題では、基礎から産業応用まで広く用いられている出芽酵母において、これまでの遺伝子レベルでの操作から、染色体レベルでのゲノム工学技術を開発することを目的とした。 これまでに出芽酵母では染色体の分断、欠失、重複の技術は開発されていたが、一度の操作で1か所を操作することしか出来ず、またしばしば目的の株が得られないなど、不完全な技術であった。そこで本研究では、染色体の複数箇所同時分断、複数箇所同時欠失、複数箇所同時重複、さらには染色体間操作である、転座、融合などの染色体操作全般をこれまでにないほど高効率かつ迅速に行う事が出来る技術の開発を目指した。 本年度では、主に染色体の複数箇所同時分断に注力して研究を行った。その結果、新奇ゲノム編集技術であるCRISRP/Cas9を応用することで、一度の操作で4か所の染色体分断を可能にする新しい技術を開発した。さらに実験操作上の細かい工夫を行う事で、操作の簡便さ、迅速さも向上させることに成功した。開発した技術をCRISPR-PCSと名付けた。本年度の研究成果については、データをまとめ、学術誌に投稿した。現在論文の査読中の段階である。また、複数箇所同時欠失と同時重複についても、一度の操作で2か所の染色体操作までは可能であることを確認できた。今後はさらなる多くの箇所の同時操作や、重複に関しては重複可能領域のさらなる長大化を目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、出芽酵母において、染色体の複数箇所同時分断・複数箇所同時欠失・複数箇所同時重複・転座・融合の技術を開発することを目標としていた。このうち、複数箇所同時分断に関しては一度の操作で4か所までの同時分断に成功した。これについてのデータをまとめ、学術誌に論文を投稿済みである。現在査読中の状況である。複数箇所同時欠失と同時重複についても一度の操作で2か所の操作に成功している。また、染色体間操作である、転座についても成功したことを簡便な確認法により確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
染色体複数箇所同時分断については論文掲載にこぎつける。 染色体複数箇所同時欠失及び同時重複については、一度の操作で3か所以上の染色体操作が可能かどうか検討する。重複に関してはこれまでに重複可能領域の上限が約300kbであったが、さらに長い領域の重複に挑戦する。また、予定通りの欠失や重複が起こらなかった株についてもどのようなことが起こったかを解析し、CRISPR-PCS法のさらなる向上を目指す。 転座と融合については、現在簡便な確認法では成功できているとの結果が出ているが、パルスフィールド電気泳動法による詳細な核型解析を行う事で本当に目的の転座と融合が引き起こされたかどうかを確認する。 最終的にはこれらの開発した技術を用いて、バイオ燃料の生産等に有用な菌株を育種することを目指す。
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