本年度は、胞子表層タンパク質をコードするcotVWXYZが胞子の最外にある多糖類層の形成に果たす役割に注目し、研究を行った。遺伝子欠損株及びGFPとの融合タンパク質発現株を用いた解析から、これらのタンパク質が多糖類の胞子表層への付着に必要であり、特にCotZと胞子アウターコートタンパク質CotEとの相互作用が多糖類層と胞子本体を結びつけていることが示された。また、CotXは、多糖類層の形成に必須なCgeAを胞子表層への局在化させる働きがあることが分かった。CotYは多糖類層形成には必須でなかったが、CotXやCotZの胞子表層への定着を強固にさせた。CotVは、欠損させてもほとんど胞子表層多糖類層の形成に影響がなかった。一方、CotWを欠損した枯草菌胞子では、多糖類層がほぼ完全に消失したことから、胞子表面への多糖類の付着に極めて重要であることがわかった。今回の結果から、CotWそれ自身か、あるいはCotWと直接結合する因子が胞子表層多糖類のアンカーとなっている可能性が考えられた。 また、本年度では、部位特異的なDNA組換え酵素SprAを介したspsMの遺伝子再編成の分子メカニズムの解析を同時に進め、SprAのC末端にその補助因子であるSprBが結合することで、SprAの活性を制御することを明らかとした。さらに、枯草菌類縁種において、gerE遺伝子が介在配列Gin (gerE-intervening element)によって分断されており、Ginにコードされる部位特異的DNA組換え酵素GirCとその補助因子GirXによって再構築されることが明らかとなった。
|