研究課題
環境中の微生物は生育環境の変化に伴い、変動する栄養源の遷移を質的・量的に正確に感知し、細胞内代謝を最適化することで環境変化に適応している。この適応機構には増殖形態の変化を伴い、その代表的な例として、鞭毛形成・バイオフィルム形成がある。この両形態はbistable(双安定性)な関係性にあり、細胞集団中の個々の細胞は生長環境に応じて、そのどちらの増殖形態を選択するか常に迫られている。これまで、生育環境に応じた細胞内代謝制御および増殖形態制御は個別の議論として研究されてきたため、両制御間における協調的関係性に関しては不明な点が多くあった。本研究課題では大腸菌の鞭毛形成マスターレギュレーターFlhD4C2 に着目し、Genomic SELEX法を用いた網羅的解析により同定した新規FlhD4C2制御候補遺伝子群の解析と、栄養源の遷移に伴ったこれら遺伝子群の動態を解析することにより、生長環境を感知しながら生き残り戦略を選択していく過程の全体像の把握を目指し、実施したものである。初年度・2年度は、新規に同定したFlhD4C2制御候補遺伝子に対するFlhD4C2の影響をIn vitro (EMSA)・In vivo(ノーザン解析及びsGFPを用いたレポーターアッセイ系)の両面から検証を行った。また、新規FlhD4C2制御候補遺伝子群の多くは中央代謝系に関与する遺伝子が多く、flhDC欠失により、中央代謝系への影響が伺える。この点に関して、合成培地に添加する炭素源・窒素源等を変化させた場合に、生育に対してどのような変化が起きるか、野生株とflhD破壊株を用いて比較・検討を行った。この結果を元に、最終年度は生育環境の変化に応じた細胞内の転写制御変動にFlhD4C2がどのように影響を与えているか再検証するため、wt及びflhD破壊株における網羅的な遺伝子発現解析をRNA-seq解析を用いて行い、新規FlhD4C2制御候補遺伝子の同定を行った。
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