研究課題
マクロラクタム抗生物質ビセニスタチン生合成において、開始基質である3-アミノイソブタン酸ユニットはアラニル化されジペプチド体となった後、アシル基転移酵素VinKによってポリケタイド合成酵素上のアシルキャリアータンパク質(ACP)ドメインへと受け渡される。このアラニル基は最終生成物には含まれず、ポリケタイド伸長反応中の非酵素的な環化反応を防ぐ役割をしていると考えられる。この非酵素的な環化反応を防ぐために、VinKはアラニル化されたジペプチド体を選択的にポリケタイド合成酵素に受け渡す必要があると考えられる。実際に、VinKは3-アミノイソブタン酸の転移活性は低いのに対し、3-アミノイソブタン酸のアミノ基がアラニル化されたジペプチド体の転移活性は高いことから末端のアラニル基を認識していると考えられる。このようなジペプチド選択性は既知のアシル基転移酵素には見られない性質であり、ジペプチド認識機構に興味が持たれた。本年度はVinKのジペプチド認識機構を明らかにすべく、VinKとジペプチド体アナログの複合体の結晶構造解析を試みた。しかし、共結晶を得ることはできなかった。そこで、ドッキング解析結果に基づき、ジペプチド末端のアラニル基と相互作用すると考えられたアミノ酸残基の変異体を作製し、アシル基転移活性を測定した。その結果、Glu109とSer266の変異体では転移活性が低下したことから、これらの残基がアラニル基の認識に関わっていると考えられた。
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