研究課題/領域番号 |
15K18682
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梶川 昌孝 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (40594437)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 植物生理学 / 藻類バイオテクノロジー / 栄養欠乏応答 / 脂質 / 炭素代謝 / 窒素代謝 / リン酸化プロテオーム |
研究実績の概要 |
緑藻クラミドモナスのC/Nバランス応答制御因子であるDYRK型タンパク質リン酸化酵素TAR1について、そのリン酸化標的となるタンパク質を探索するため、in vitroおよびin vivoでのリン酸化プロテオーム解析をおこなった。その結果標的候補として200個のリン酸化ペプチドを見出した。この結果を論文としてまとめPlant Journal誌に投稿し、現在under rivisionである。また標的候補をコードする遺伝子の中から、TAR1の下流で発現変動する遺伝子群を制御すると予想される転写調節因子や、TAR1によるリン酸化によって活性が制御される可能性のあるタンパク質リン酸化酵素の遺伝子について、それぞれ挿入変異株をタグDNA挿入変異体プールより単離した。得られた変異体について表現型解析を行った結果、1個の転写因子様遺伝子と1個のタンパク質リン酸化酵素遺伝子の挿入変異株において、C/Nストレス条件(光独立栄養5%CO2通気かつ窒素欠乏条件)での表現型が、ステイグリーン(クロロフィル高残存生)かつ高TAG蓄積を示し、tar1-1変異体と似た表現型を示すことがわかった。これらの因子はTAR1によるタンパク質リン酸化制御を介して、TAR1の下流でクラミドモナスのC/Nストレスに対する応答制御を担う新奇因子である可能性が考えられた。今後、これらの変異体について目的遺伝子へのタグDNAの挿入と表現型が連鎖すること、野生型配列の挿入によって変異表現型が相補するかを調べることで、TAR1の下流因子であることを検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の達成目標として、1.リン酸化プロテオーム解析によるTAR1のリン酸化標的タンパク質の候補の探索、2.得られた候補タンパク質について挿入変異体の単離と表現型解析、3.TAR1の陸上植物でのオーソログの機能を明らかにする、という3つの大目標を設定している。このうち、1.についてはリン酸化プロテオームを共同研究によって実施し、成果を論文にまとめ投稿した。現在revision中である。2については標的候補のうち幾つかについて挿入変異体を単離し、機能解析を行った。そのうち転写因子様の遺伝子とタンパク質リン酸化酵素をコードする遺伝子の挿入変異体がtar1-1と似たステイグリーンかつ脂質高蓄積の表現型を示すことがわかったので、さらに詳細な表現型の解析と遺伝子への挿入と変異表現型の相関を調べている。
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今後の研究の推進方策 |
リン酸化プロテオーム解析の結果をまとめた投稿論文について、接合へのTAR1の関与を明らかにすることを求められている。そこで、野生型、tar1-1変異体、および相補株について接合率を計測し、また接合のマーカー遺伝子の発現に影響が見られるかを検証する。得られた結果をまとめて論文の掲載受理を目指す。標的候補因子の変異体については遺伝解析と相補実験によって挿入箇所と変異表現型との相関性を確認する。陸上植物でのTAR1の機能を明らかにするために、基部陸上植物のモデルであるゼニゴケのTAR1オーソログの変異体とその相補株の表現型解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
クラミドモナス窒素欠乏制御因子の変異体tar1-1の表現型解析ならびにリン酸化プロテオームの成果を論文にまとめて投稿中であるが、審査において接合(生殖)能へのtar1-1変異の影響を調べる追加実験を要求された。その追加実験を遂行するために次年度に下記の使用計画を実行する。この実験を追加することが、論文の掲載受理に必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
野生型、tar1-1、相補株を用いた接合効率の評価を行う。また接合前と接合後の12時間までに経時的にRNAサンプルを調整し、接合のマーカー遺伝子の発現の変動パターンを3者で比較する。これらの結果をまとめて論文の再投稿を行う。
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