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2015 年度 実施状況報告書

新規D-アミノ酸分析法のためのD-アミノ酸酸化還元酵素のメタエンザイム的探索

研究課題

研究課題/領域番号 15K18684
研究機関秋田県立大学

研究代表者

牟田口 祐太  秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30724314)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワードD-アミノ酸 / 好熱菌 / 酸化還元酵素
研究実績の概要

平成27年度は玉川温泉の温泉水をスターターとして、栄養素濃度、pHを変えた様々な培養条件で好熱菌の培養を試み、50°C・pHと50°C・pHの条件下で生育する菌の培養に成功した。
これに加えて、平成27年度はゲノムデータベースの情報に基づき、好熱菌Geobacillus kaustophilus JCM 12893のゲノム中コードされている推定D-アミノ酸脱水素酵素(酸化還元酵素)遺伝子(Locus tag: GK1399)の発現タンパク質の機能解析を行った。G. kaustophilus JCM 12893は生育温度範囲が42~74°C、最適生育温度が60°Cの中等度好熱菌であり、高い安定性と酵素活性を有したD-アミノ酸酸化還元酵素を得ることができると予想した。大腸菌で発現させた組換えタンパク質を、Niアフィニティーカラム、熱処理によって高度に精製し、既知のD-アミノ酸脱水素酵素の多くが活性を示すD-プロリンを基質として、D-アミノ酸酸化還元酵素活性を測定した。その結果、D-プロリンに対する酸化還元酵素活性を検出した。しかしながら、その活性は既知のD-アミノ酸脱水素酵素のD-プロリンに対する活性に比べ非常に低いものであった(約1/25000~1/300)。そこで、他のD-アミノ酸に対する活性を調べたところ、D-プロリンに加え、グリシン、D-トリプトファン、D-メチオニン、D-ロイシン、D-ノルロイシン、D-α-アミノ酪酸、D-ノルバリンの8種類のアミノ酸に対して、酸化還元酵素の活性を示すことを見出した。しかし、これら8種類のアミノ酸に対する活性も非常に低いものであった為、予想とは異なり、本酵素が標準アミノ酸のD型に特異的に活性を示す酵素ではないことが考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成27年度は玉川温泉の温泉水をスターターとして、好熱菌の培養を行った。年度当初は、より多種・大量の菌体を得ることを目的として、窒素源及び炭素源が豊富な培地を用いて好熱菌の培養を試みたが、菌の増殖を確認できなかった。そこで、窒素源・炭素源の濃度を段階的に低くした培地を用いることで、温泉水をスターターとした好熱菌の培養に成功した。この温泉水をスターターとした好熱菌の培養条件の設定に長期間を要したため、メタエンザイム法を用いたD-アミノ酸酸化還元酵素のスクリーニングを十分に行えなかった。
一方、ゲノム情報に基づき、好熱菌G. kaustophilus由来推定D-アミノ酸脱水素酵素遺伝子の発現タンパク質の機能解析を行った。その結果、得られた組換えタンパク質にD-アミノ酸酸化還元酵素の活性を見出すことに成功したが、本酵素の活性は既存のD-アミノ酸酸化還元酵素に比べ非常に低く、また基質特異性も低かった。以上のことから、平成27年度はD-アミノ酸酵素分析法への転用に適したD-アミノ酸酸化還元酵素を見出すことができなかった。

今後の研究の推進方策

平成28年度は温泉水・土壌をスターターとした好熱菌の培養における培養条件を再検討する。また、既知のD-アミノ酸酸化還元酵素のアミノ酸配列情報を基に、遺伝子工学的手法を用いて、温泉水・土壌から培養した好熱菌中のD-アミノ酸酸化還元酵素遺伝子のクローニングを行う。
秋田県内の後生掛温泉、藤七温泉、小安峡温泉、鬼首温泉等の温泉水・土壌から、好熱菌の培養及びD-アミノ酸酸化還元酵素のスクリーニングを行う。その際には、前年度の研究結果を踏まえ、栄養素(炭素源・窒素源)を段階的に希釈した培地を用いることで、より多くの好熱菌を獲得し、幅広くD-アミノ酸酸化還元酵素のスクリーニングを行う。
また、培養に成功した好熱菌から抽出したゲノムDNAと、既知のD-アミノ酸酸化還元酵素のアミノ酸配列情報に基づいて設計した縮重プライマーを用いてPCRを行い、好熱菌由来のD-アミノ酸酸化還元酵素遺伝子のクローニングを試みる。このようなメタゲノム的手法を取り入れることで、メタエンザイム法では見出すことができないD-アミノ酸酸化還元酵素についてもスクリーニングを試みる。

次年度使用額が生じた理由

当初の計画では、研究初年度の平成27年度に恒温振盪培養機(約900千円)を購入する予定であったが、研究機関内にある同スペックの恒温振盪培養機を使用できるようになったため、同装置を新たに購入しなかった。一方で、平成27年度中期に、研究室に所属する学生の増加に伴い、研究代表者の実験室を学内の別室に移転する案が浮上した。年度中期の段階では、この案は確定していなかったが、実験室を移転した場合、本研究課題を遂行するために必要な備品を新たに購入する必要があるため、恒温振盪培養機の購入に充てる予定であった約900千円を年度内に使用しなかった。

次年度使用額の使用計画

平成28年度一日より、実験室を移転することが決定した為、平成28年度には、前年度使用しなかった約900千円を遠心分離機等の備品整備のために使用する予定である。尚、平成28年度に予定されていた交付金については、当初の計画通り使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Purification of a protein exhibiting isoleucine 2-epimerase activity from Lactobacillus otakiensis JCM 150402015

    • 著者名/発表者名
      Yuta Mutaguchi and Toshihisa Ohshima
    • 雑誌名

      Bio-protocol

      巻: 5 ページ: e1632

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Geobacillus kaustophilus D-アミノ酸脱水素酵素遺伝子の機能解析2015

    • 著者名/発表者名
      菅澤達希、牟田口祐太
    • 雑誌名

      秋田県立大学ウェブジャーナルB

      巻: 2 ページ: 62-66

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 乳酸菌Lactobacillus otakiensisにおけるD-分岐鎖アミノ酸の局在と機能2016

    • 著者名/発表者名
      十時繁幸, 前田純平, 牟田口祐太, 大島敏久, 土居克実
    • 学会等名
      日本農芸化学会2016年度大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2016-03-28 – 2016-03-30
  • [学会発表] Isoleucine 2-epimeraseホモログ遺伝子をもつ乳酸菌のD-アミノ酸生産2016

    • 著者名/発表者名
      牟田口祐太, 春日和, 小嶋郁夫
    • 学会等名
      日本農芸化学会2016年度大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2016-03-28 – 2016-03-30

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公開日: 2017-01-06  

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