研究実績の概要 |
ビタミンD水酸化体は、すでに医薬品となっている天然の活性型ビタミンD3(1α,25-ジヒドロキシビタミンD3)やその誘導体を含め、骨粗鬆症やがん等の予防・治療が期待される有用な化合物である。しかしながら、化学合成が困難なことから高価な化合物となっており、安価な製造法が求められている。活性型ビタミンD3については、近年バイオコンバージョン法による安価な生産が実用化されたが、他のビタミンD水酸化体についてはそのような生産報告はない。本研究では、活性型ビタミンD2(1α,25-ジヒドロキシビタミンD2, 1α,25D2)など、これまでバイオコンバージョン法による生産報告例のなかったビタミンD水酸化体を簡便に提供することを目的とした。 我々は、これまでに、放線菌由来CYP105A1の二重変異体(R73A/R84A)が、ビタミンD3を基質に高い活性型ビタミンD3生産能を有することを報告してきた。しかしながら、本変異体とビタミンD2を反応させた場合、活性型ビタミンD2の生成はほとんどみられなかった。前駆体である25-ヒドロキシビタミンD2(25D2)は生成されたが、25D2に対する1α位水酸化活性が極めて低いことがわかった。VD2を基質に25D2を経て1α,25D2を生成する酵素の取得を目的とし、R73V/R84Aと25D2とのドッキングモデルを作製した。Met239がVD2と立体障害を起こしている可能性が示唆されたため、Met239をアラニンに置換したCYP105A1三重変異体(R73A/R84A/M239A)を作製し、25D2に対する1α位水酸化活性を測定した。その結果、変異導入前の二重変異体(R73A/R84A)と比較し、20倍の1α位水酸化活性を有することがわかった。他に、R73A/R84Aを利用した25,26-ジヒドロキシビタミンD2生成にも成功した。
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