COI1-JAZ受容体の選択的アンタゴニストの開発

2016 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15K18687
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 石丸 泰寛 東北大学, 理学研究科, 助教 (80590207)
• 研究期間 (年度): 2015-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: 生理活性 / 植物

研究実績の概要

ジャスモン酸イソロイシン（JA-Ile）は、成長抑制、老化誘導などの他に、病原菌感染や虫害に対する植物の免疫応答誘導など多彩な生理機能をもつ重要な植物ホルモンである。JA-Ileの生理機能には、免疫応答誘導のように植物増産上の観点から有益なものと、成長抑制や老化誘導のように不利益なものがあり、JA-Ileの投与でこれらが同時に活性される。もしも有益な応答のみを誘導できるJA-Ile関連分子があれば、それによって植物が本来もつ外敵への耐性機能を増強することが可能となり、食料増産につながる画期的な植物生長補助剤となる。JA-Ileは、COI1とJAZという2種類のタンパク質のタンパク質間相互作用（PPI）を誘導することで、各種の生理機能を引き起こす。モデル植物シロイヌナズナ（Arabidopsis thaliana）のゲノム中には、COI1は1種類、JAZは12種類のサブタイプがコードされており、このCOI1と12種類のJAZの組み合わせが各々異なる生理機能を制御することで、JA-Ileの多彩な生理機能を誘導すると考えられている。しかしJAZ間の遺伝子配列は非常に相同性が高く、高度な遺伝的重複系を苦手とする現代の分子生物学では、各JAZサブタイプが特異的に誘導する生理活性を特定することは極めて難しい。そのためCOI1-JAZ系における各JAZサブタイプの機能の解明と制御には、COI1と特定のJAZサブタイプとのPPIを選択的に誘導するJAZサブタイプ選択的アゴニストの開発が必要である。植物病原菌Pseudomonas syringaeの産生する植物毒素コロナチン（COR）はJA-Ileの構造ミミックであり、JA-Ileと同じCOI1-JAZ共受容体に強く結合して同じ応答を引き起こす。本研究では、このCORの分子構造をもとにして、JAZサブタイプ選択的アゴニストの開発した。

研究成果

• [雑誌論文] A new transgenic rice line exhibiting enhanced ferric iron reduction and phytosiderophore production confers tolerance to low iron availability in calcareous soil. (2017)
  • 著者名/発表者名: Masuda, H., Shimochi, E., Hamada, T., Senoura, T., Kobayashi, T., Aung, M.S., Ishimaru, Y., Ogo, Y., Nakanishi, H., Nishizawa, N.K.
  • 雑誌名: PLoS ONE 巻: 12 ページ: e0173441
  • DOI: 10.1371/journal.pone.0173441
  • 査読あり
• [雑誌論文] GTR1 is a jasmonic acid and jasmonoyl-l-isoleucine transporter in Arabidopsis thaliana. (2017)
  • 著者名/発表者名: Ishimaru, Y., Oikawa, T., Suzuki, T., Takeishi, S., Matsuura, H., Takahashi, K., Hamamoto, S., Uozumi, N., Shimizu, T., Seo, M., Ohta, H., Ueda, M.
  • 雑誌名: Biosci Biotechnol Biochem 巻: 81 ページ: 249-255
  • DOI: 10.1080/09168451.2016.1246174
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] AtSWEET13 and AtSWEET14 regulate gibberellin-mediated physiological processes. (2017)
  • 著者名/発表者名: Kanno, Y., Oikawa, T., Chiba, Y., Ishimaru, Y., Shimizu, T., Sano, N., Koshiba, T., Kamiya, Y., Ueda, M., Seo, M.
  • 雑誌名: Nat Commun 巻: － ページ: －
  • DOI: 10.1038/ncomms13245
  • 査読あり
• [雑誌論文] Jasmonate signaling is activated in the very early stages of iron deficiency responses in rice roots. (2016)
  • 著者名/発表者名: Kobayashi, T., Itai, R.N., Senoura, T., Oikawa, T., Ishimaru, Y., Ueda, M., Nakanishi, H., Nishizawa, N.K.
  • 雑誌名: Plant Mol Biol 巻: 91 ページ: 533-547
  • DOI: 10.1007/s11103-016-0486-3
  • 査読あり
• [学会発表] ジャスモン酸によるオー キシンシグナル抑制機構 (2016)
  • 著者名/発表者名: 丸泰寛、鈴木健史、Christian Meesters(Max Planck Institute)、Erich Kombrink(Max Planck Institute)、高橋公咲 （北大）、松浦英幸（北大）、林 謙一郎（岡山理科大）、深城英弘（神戸大）、上田 実
  • 学会等名: 第151回日本農芸化学会東北支部
  • 発表場所: 山形大学農学部（山形県・鶴岡市）
  • 年月日: 2016-10-09 – 2016-10-09