研究課題/領域番号 |
15K18691
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
柳田 亮 香川大学, 農学部, 准教授 (10598121)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | C1ドメイン / セスキテルペンラクトン / タプシガルギン |
研究実績の概要 |
1,2-sn-ジアシルグリセロール (DAG) は,細胞内情報伝達に関わるプロテインキナーゼC (PKC) のエフェクター分子として知られているが,近年RasGRPといったDAG受容タンパク質が,がんをはじめとする様々な疾患において重要な役割を果たしていることが明らかにされている.しかし,既知のリガンドはPKCとこれらの非PKC型DAG受容タンパク質を区別できない.本研究では,天然セスキテルペンラクトンであるタプシガルギンをリードとした,非PKC型DAG受容タンパク質選択的なリガンドの開発を目的としている. 本年度は,1) タプシガルギンのPKCアイソザイム選択性の評価,2) タプシガルギン単純化アナログの設計と合成,について研究を行った.前年度に結合試験を行ったPKCδ C1Bドメイン以外のPKC C1ドメイン(conventional PKCはC1A,novel PKCはC1B)に対するタプシガルギンの結合能を評価した結果,タプシガルギンはnovel PKC C1Bドメインに対しては全く結合せず,α-C1Aおよびγ-C1Aドメインに対してわずかに結合能を示すことが明らかとなった.タプシガルギンはRasGRP4 C1ドメインに対して阻害定数Kiが1.9 μMで最も強く結合したことから,RasGRP選択的なリガンドのリードとして有望であることが示唆された.これまでに結合試験を行ったC1ドメインのアミノ酸配列を比較したが,タプシガルギンが相対的に強く結合するタンパク質の発がんプロモーター結合部位のアミノ酸残基に特徴的なアミノ酸残基やパターンは見出されなかった. 次に,前年度に得られた構造活性相関の知見から,タプシガルギンのシクロペンテン環を除去または芳香環で置き換えた単純化アナログを設計し,合成を開始した.本年度は,鍵中間体の不斉点構築の反応条件について検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では,本年度にタプシガルギン単純化アナログの合成が完了している予定であったが,現在のところ合成が半ばである。今後は合成経路やアナログ設計の再検討を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
1) タプシガルギン単純化アナログの設計・合成 今後は,設計したタプシガルギン単純化アナログの合成を進める.タプシガルギンのシクロペンテン環を芳香環に置換したアナログでは,オルソ位に置換基を持つベンズアルデヒド誘導体の不斉アリル化により最初の不斉点導入を試みたが,十分な不斉収率が得られなかった.したがって,高い不斉収率で不斉点が導入可能な中間体の設計,合成経路の再検討を行い,タプシガルギン単純化アナログを合成する.
2) タプシガルギンアナログの各種生物活性評価 合成したアナログについてRasGRPに対する結合能と選択性を評価する.RasGRPは原がん遺伝子産物Rasの活性化因子であるため,Rasタンパク質の活性化について調べる.
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