研究実績の概要 |
スフィンゴ脂質は、スフィンゴイド塩基を基本骨格に持つ脂質の一群であり、セラミドやスフィンゴミエリン、スフィンゴ糖脂質など多種多様の分子種が存在する。スフィンゴ脂質は一般的に、細胞膜の構成成分として各組織に普遍的に存在している。最近では機能性の食品成分としても注目されはじめ、経口摂取による抗腫瘍作用や免疫調節作用、皮膚機能改善作用など様々な生理機能を有することがわかってきた。これらのスフィンゴ脂質の機能性については、生体内の局所に注目した研究が大部分であるが、「栄養素成分としてのスフィンゴ脂質」といった観点からは評価されていない。そこで本研究では、栄養素の取り込みの変化が様々な疾患の発症に影響を与えうることに注目し、スフィンゴ脂質と様々な栄養素の吸収や動態との関わりを明らかにすることで、食餌性スフィンゴ脂質の新たな可能性を見出すことを目的とした。 消化管内における様々な栄養素の取り込みに注目し、食餌性スフィンゴ脂質の小腸上皮細胞における栄養素の代謝やトランスポーターの遺伝子発現に与える影響について、小腸上皮様モデルであるCaco-2細胞を用いて検討した。その結果、i-FABP2(脂肪酸),Cat1(カルシウム),CorA(マグネシウム),MgtE(マグネシウム)、DMT1(鉄)のmRNA量を増加させ、NPC1L1(コレステロール),MCT1(モノカルボン酸),CTR1(銅)のmRNA量を減少させることがわかった。これらの結果から、スフィンゴ脂質は、不足しがちな栄養素の取り込みを促進する可能性が推察され、生体内における栄養素のバランスを改善するという新たな機能を有することが期待された。今後は、実際にその栄養素の取り込みが変化するのかなどについて検討していく。
|