研究課題/領域番号 |
15K18694
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大崎 雄介 東北大学, 医学系研究科, 助教 (40509212)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腎臓 / 高血圧 / ナトリウム / 酸化ストレス / ミトコンドリア / 腎臓生理学 |
研究実績の概要 |
腎臓は心拍出量のおよそ20%を受ける血流量の多い臓器であるが、腎臓髄質領域はその血流量の10%程度しか供給されず、相対的に酸素濃度が低くなっている中で能動輸送により積極的にナトリウムの再吸収を行っており酸素を消費していることから、虚血に弱い構造となっている。また、腎臓髄質領域の血流量は圧ナトリウム利尿を介して体液恒常性の維持に非常に重要な役割を果たしている。我々のこれまでの研究により、腎臓髄質領域のヘンレのループ太い上行脚ではナトリウム再吸収によりミトコンドリアならびに細胞質の酸化ストレス産生が上昇し、これによる腎髄質血流量の低下を介したナトリウム貯留・血圧上昇が示唆されている。また、腎臓における酸化ストレス産生は食塩感受性高血圧を誘発することも報告されているが、ミトコンドリア由来酸化ストレスの寄与については十分には解明されていない。そこで平成28年度では食塩感受性モデル動物であるDahl食塩感受性高血圧(DahlS)ラットを用いて、ミトコンドリア酸化ストレスによる食塩摂取による血圧上昇ならびに腎障害に対する影響について検討を行った。 DahlSラットへ高食塩飼料を給餌し、血圧上昇ならびに腎障害を誘導した。同時に酸化ストレスのスカベンジャーであるTEMPOL、ならびにミトコンドリア酸化ストレスのスカベンジャーmitoTEMPOを浸透圧ポンプにより持続投与した。収縮期血圧ならびに腎障害マーカーとして尿中タンパク排泄量を測定した。高食塩飼料給餌により収縮期血圧ならびに尿タンパク排泄量は有意な上昇を認めた。一方で、MitoTEMPOによる血圧上昇抑制ならびに尿タンパク排泄量は微減する傾向にあったが有意な差を得るには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたDahl食塩感受性高血圧ラットを用いた検討を遂行することができた。今後はさらに条件を変えて検討を行いつつ、急性実験による検討も進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリア由来酸化ストレスによる食塩感受性高血圧ならびに腎障害に対する影響について、検討を続けてゆく。圧ナトリウム利尿機構が働きにくいDahl食塩感受性高血圧(DahlS)ラットは高食塩飼料を給餌することによりナトリウム貯留が起こり、体液過剰による血圧上昇ならびに腎障害を発症することが知られている。この機序には腎臓髄質領域における活性酸素種産生が関与することが明らかとなっている。細胞膜上のNADPH oxidaseの関与はよく検討されていたが、ミトコンドリア由来酸化ストレス産生の影響については十分には検討されていない。 昨年度と同様にDahlSラットへ高食塩飼料を給餌し、血圧上昇ならびに腎障害を誘導し、酸化ストレス消去薬であるTEMPOLならびにミトコンドリア酸化ストレス消去薬であるmitoTEMPOを浸透圧ポンプにより持続投与する。血圧、尿中マーカー類、腎組織の評価ならびに腎臓の皮質・髄質外層・髄質内層の部位別に障害マーカー遺伝子類や酸化ストレス産生・消去系に関わる遺伝子類の発現測定を行う。また、上記研究に加えて、麻酔下のラットを用いたミトコンドリア酸化ストレス消去剤によるナトリウム利尿に対する影響についても急性実験により検討する。 MitoTEMPO、TEMPOLならびにコントロール群より得られた結果を比較検討することにより、食塩感受性高血圧ならびに腎障害に対してミトコンドリア由来酸化ストレスが与える影響について評価を行う。
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