研究課題
腎臓は心拍出量のおよそ20%を受ける血流量の多い臓器であるが、腎臓髄質領域はその血流量の10%程度しか供給されず、相対的に酸素濃度が低くなっている。その中で、腎臓髄質領域では能動輸送により積極的にナトリウムの再吸収を行っていることから酸素消費が高く、虚血に弱い構造となっている。また、腎臓髄質領域の血流量は圧ナトリウム利尿を介して体液恒常性の維持に非常に重要な役割を果たしている。腎臓髄質領域のヘンレのループ太い上行脚ではナトリウム再吸収によりミトコンドリアならびに細胞質の酸化ストレス産生が上昇し、これによる腎髄質血流量の低下を介したナトリウム貯留・血圧上昇が示唆されている。また、腎臓における酸化ストレス産生は食塩感受性高血圧を誘発するが、ミトコンドリア由来酸化ストレスの寄与については十分には解明されていない。平成29年度は食塩の摂取により血圧が上昇するDahlS食塩感受性高血圧ラットを用いて、高食塩飼料給餌による血圧上昇に対するミトコンドリア酸化ストレスの影響を詳細に解析する目的で、ラジオテレメトリー法を用いて自由行動下でのラットの24時間血圧を測定した。浸透圧ポンプにて酸化ストレスのスカベンジャーであるTEMPOL、ならびにミトコンドリア酸化ストレスのスカベンジャーmitoTEMPOを浸透圧ポンプにより持続投与したが、顕著な血圧の変化を認めるには至らなかった。また近年、急性腎障害後の腎障害から十分に回復せずに慢性腎障害化することが着目されており、この障害機序に対する酸化ストレスの影響についても検討を行った。虚血再灌流による腎障害モデルラットに浸透圧ポンプを用いてTEMPOLならびにmitoTEMPOを持続投与したところ、血中腎障害マーカーが低下する傾向が認められ、急性腎障害に酸化ストレスが関与しうることが示唆された。
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Scientific Reprots
巻: 8 ページ: 1-14
10.1038/s41598-018-20940-x