申請者は、クビレズタ(海ぶどう)などの一部の食葉緑藻に含まれるカロテノイドのシフォナキサンチンが、細胞膜の構成成分であるスフィンゴミエリンを増加させることによって、マスト細胞の活性化を強く抑制することを見出している。マスト細胞の活性化を抑制する化合物には、花粉症などのI型アレルギーの症状を緩和する効果が期待されるため、本研究では、シフォナキサンチンを新規のアレルギー体質改善食品成分へと昇華させるべく、個体レベルでの評価や他の抗アレルギー食品成分との相互作用(食べ合わせ)の評価を進めてきた。 NC/Ngaマウスの耳介にジニトロフルオロベンゼンを反復塗布することによって動物モデルを作成し、シフォナキサンチンの経口投与による症状の緩和度合いを評価したところ、2 mg/kg body weightのシフォナキサンチンの経口投与によって、耳介の腫れが緩和されることが確認できた。このことからシフォナキサンチンは個体レベルでも抗アレルギー作用を発揮すると考えられた。同時に、シフォナキサンチンはマウス体内において酸化的に代謝されることも見出し、マスト細胞が局在する真皮においても、シフォナキサンチンの酸化的代謝物が蓄積していたことから、それら代謝産物の生物活性について興味がもたれた。 シフォナキサンチンと他の抗アレルギー食品成分の相互作用の評価では、ポリフェノール類とビタミンE類に注目し、消化管吸収における相互作用と炎症反応における相互作用の両方を、培養細胞モデルを用いて評価してきた。その結果、α-トコフェロールやγ-トコトリエノールが共存することによって、シフォナキサンチンの培養細胞への取り込みが抑制されることを見出した。一方、シフォナキサンチンの抗炎症作用(マスト細胞活性化抑制作用)を相乗的に増強するような成分は、本研究に供試したポリフェノール類の中には認められなかった。
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