研究実績の概要 |
これまで、ある種の乳酸菌が腸管樹状細胞への機能発揮から制御性T細胞を増加させマウスDSS誘導大腸炎を軽減させることが明らかとなっている。本研究では、腸管樹状細胞評価系の樹立から、本乳酸菌の機構解析や機能成分の探索を行い炎症性腸疾患軽減に関わる有効成分を明らかにすることを目的としている。乳酸菌によるTregの誘導が代謝産物によるものなのか明らかにするために、無菌マウスに死菌体を投与したところ、大腸において誘導性Tregの増加が認められ、菌体成分が誘導に関わることが明らかになった。同時に、IL-10の発現量が大腸において増加することが明らかになった。IL-10産生に関与する乳酸菌菌体成分を明らかにするため、温度感受性変異SV40LT抗原トランスジェニックマウスから腸管樹状細胞株の樹立を試みたが、残念ながら樹立に至らなかった。一方、昨年度までにGM-CSFにより分化した樹状細胞やマウス樹状細胞株 Jaws-II細胞が乳酸菌のIL-10産生評価に有効である事を明らかとし、その中でSyk阻害剤によりIL-10の産生が抑制されることやSykのリン酸化からITAMを介するC型レクチン受容体シグナルが重要であることを明らかとしていた。また、TLRもIL-10の産生に重要である事が示唆されていた。本年度は、Jaws-II細胞でノックダウンを行いTLRの中でもTLR1,2,9が認識に関わること、そして、C型レクチン受容体シグナルに関与するFcRgも認識に関わる事が明らかとなった。TLRとC型レクチン受容体を強制発現させたNFATもしくはNFkBレポーター細胞を樹立し認識受容体の解明を目指している。本研究により、乳酸菌上に存在するリガンドの特定、TLRとC型レクチンの協調作用の詳細、そしてTregの分化誘導にどのように関わるのかを明らかにし乳酸菌による腸管免疫制御を目指す。
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