研究課題/領域番号 |
15K18708
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小林 真 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (60719798)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 冬の温暖化 / 北方林 / 土壌動物 / 窒素循環 / ミミズ |
研究実績の概要 |
冬の温暖化にともない、北海道北部ではこれまでの80年間で約2週間ほど雪解け時期が早まっている。本研究では雪解け時期の早まりが樹木(成木)に及ぼす影響を調べるため、2016年3月に北海道大学研究林において人為的に積雪時期を1-2週間早期化する処理を行い、その樹木の成長や葉の形質、土壌窒素動態(無機態窒素の生成量)へ及ぼす影響を調査した。処理後に対照区と雪解け処理区を比較したところ、冬期から春期にかけての土壌中のアンモニア態窒素の生成量へは影響しなかったが、硝酸態窒素の生成量は有意に増加した。結果として、無機態窒素の総生成量は、雪解け処理によって有意に増加した。しかし、雪解けの早期化処理は、樹木(成木)の葉の窒素含有量、炭素:窒素比、単位面積あたりの葉重量、乾燥の指標となる炭素安定同位体比などの葉形質やシュート成長へは影響をしていなかった。これらの結果は、雪解けが早まると、土壌中の大型土壌動物や土壌微生物が早期から温暖な環境に晒される事で活発化し、土壌中の有機物分解が進むことで硝酸態窒素が増える一方で、養分が増加しても少なくとも短期的には成木の成長増加へはつながりにくいことを示唆する。しかし、成木の成長は、前年の光合成産物に由来する貯蔵養分などの関係上、前年の環境条件に制御される部分も大きい。今後は継続して雪解けの時期を操作する処理を実施し、その土壌条件や成木の生理生態学的挙動への影響を検証する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた操作実験を行う事ができ、ほぼ期待していたとおりの結果を得る事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、雪解けの早まりによる硝酸態窒素の増加が大型土壌動物の働きによるものであることを検証するため、ミミズの生息密度の異なる場所について雪解け時期を操作する実験を行い、硝酸態窒素の変化程度との関連を検証する。また、初年度に構築した林冠アクセスシステムを用い、成木の成長や葉の理化学性についてしらべる。なお、土壌動物による影響を検知する感度をあげるため、同位体にてラベリングしたミミズを用いて調査を行う。また、雪解けの早まりによる影響を受けやすいミミズの特徴を明らかにするため、体サイズの異なる2つのミミズに対して雪解け処理を施すとともに、その窒素循環との関係性を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年に予定していた化学分析について、複雑な箇所があり、補助者ではなく自身で実施したため、次年度への繰越しとなった。また、国際土壌動物学会への参加を予定していたが、国内での国際学会開催となったため、その分の旅費を繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
夏に開催される国際学会への参加にて、旅費を使用する。また、最終年度で分析サンプルの増加が見込まれる中、短期支援員の雇用や外注での分析にあて、効率的なデータの収集を目指す。
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