研究課題/領域番号 |
15K18719
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
牧田 直樹 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (40723086)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 森林 / 炭素循環 / 根系 |
研究実績の概要 |
本研究は、樹木細根‐菌根菌相互作用の実態と機能を解明するため、亜寒帯気候の森林にて野外観測および室内分析を進めた。まず、試験地における菌根菌のDNA抽出を行い、遺伝子解析のための基礎情報を整理する。次に、菌根菌感染率・種組成の把握と細根系の根圏呼吸速度の野外観測を行った。根系に関しては、根の生理活性が落ちないよう現場で迅速に、細根系の根圏呼吸速度を測定し、形態構造解析システム(WinRHIZO)を用いて根直径・根長・表面積・体積を測定した。統計解析およびその考察に現在、取り組んでいる。 また同時に、亜寒帯気候の森林における現存量の野外窒素負荷調査を進めた。近年、人為活動によって放出された窒素酸化物が大気中を通って生態系に過剰に負荷され、系に対する外部からの圧力が増している。本研究では炭素循環の重要な構成要素である細根に着目し、窒素負荷に対する細根系の現存量と生産量の応答を解明する事を目的とした。落葉広葉樹林(優占種:ミズナラ)において 窒素施肥区(100 kgN/ha/yr)と対照区を設定し、尿素散布による窒素施肥実験を行った。細根現存量は、直径 5 cm・深さ20 cmの土壌コアを採取し、生きた細根(直径<0.5mm、0.5-2mm)のみを取り出し乾重を測定した。細根生産量は、イングロースコア法による成長量と枯死量の 2 年間の変化から推定した。二階級に区分した細根現存量において、直径<0.5mmの根現存量と生産量では、窒素施肥区のほうが対象区よりも有意に高かった。一方、0.5-2mm の根現存量と生産量は、共に処理間に有意差は確認されなかった。以上より、本研究の施肥量・実験期間においては、窒素施肥に対する末端の微細根にのみ応答が認められ、細根の資源獲得能や炭素分配に影響を与えること示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、H28年度に計画していた細根生理特性に影響を及ぼす菌根菌の探索と根圏呼吸の定量化を行い、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
菌根相利共生が根圏呼吸及び森林炭素動態に与える影響の検証を行い、樹種内・樹種間における樹木細根-菌根菌の関連性のパターンを把握する。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度においても海外調査を実施するため、一部をH29年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度の請求額とあわせて、フィンランドにて野外調査を行うために使用する。
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