本研究は、樹木細根‐菌根菌相互作用の実態と機能を解明するため、亜寒帯気候の森林にて野外観測および室内分析を進めた。まず、試験地における菌根菌のDNA抽出を行い、遺伝子解析のための基礎情報を整理する。次に、菌根菌感染率・種組成の把握と細根系の根圏呼吸速度の野外観測を行った。根系に関しては、根の生理活性が落ちないよう現場で迅速に、細根系の根圏呼吸速度を測定し、形態構造解析システム(WinRHIZO)を用いて根直径・根長・表面積・体積を測定した。分析、統計解析およびその考察に現在、取り組んでいる。 また同時に、亜寒帯林における系統学種と菌共生型が異なる11樹種の根の外見や化学的な性質、内部の組織構造といった根特性を多角的に評価した。調査は、系統学種と菌共生型によって5つの樹種グループ(裸子植物-外生菌根、裸子植物-内生菌根、被子植物-外生菌根、被子植物-内生菌根、被子植物-根粒菌共生)に属する11樹種を対象とした。各種、3個体の成木の根元から採取した4次根(最も末端の分岐根を1次根とする)までの細根系の形態特性(分岐頻度,根組織密度,比根長)、化学特性(窒素・カリウム濃度)および解剖特性(総中心柱・総皮層)を測定した。測定したすべての根特性は種間で有意に異なっており、各樹種は明確な特徴を持つことが明らかになった。また11樹種は異なる資源獲得戦略を選択している可能性が示された。さらに、根特性は系統学種と菌共生型が同じ樹種グループごとに類似し、系統学種と菌共生型が樹木根の種同定の重要な分類であることが示唆された。
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