研究課題/領域番号 |
15K18722
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松尾 美幸 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (70631597)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 経年変化 / 湿熱処理 / 湿度依存性 / 温度依存性 / 材質 / 古材 |
研究実績の概要 |
本研究は,木材の経年変化メカニズムを解明するため,経年変化を,熱と水分の両方がかかわる物理化学的反応として統一的に捉えることを目的としている.本年度は,様々な処理条件で湿熱処理をおこなった.処理にともなう木材の材質変化について温度依存性と湿度依存性を明らかにし,それに基づいて常温での変化を予測した. 7条件(処理温度95℃処理湿度95%,95℃85%,95℃75%,95℃65%,85℃95%,75℃95%,65℃95%)でヒノキ材の湿熱処理を行い,各種材質を測定した.処理時間は最長1ヶ月とした.湿熱処理にともなってヤング率の変化は見られず,色は暗色化した.これは経年による変化と同様であった.平衡含水率については,処理湿度によって増加・減少の傾向が異なるという結果であったが,測定の信頼性を上げるため再測定する予定である. 色変化の温度依存性は,既往研究で報告されている通りアレニウス則に従い,色変化の湿度依存性は湿度に対して線形であった.明らかになった温度依存性・湿度依存性から,常温(15℃,相対湿度74%)での変化を外挿予測したところ,実際の経年変化の速度にかなり近いことが分かった.このことから,経年変化には水分が存在することによって起こる反応が関わっている可能性が支持された. また,予備実験としてケヤキおよびスプルースについてもいくつかの条件で処理を行ったが,材質変化の速さに樹種依存性がみられ,ケヤキは他の樹種に比べ速かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年という短い時間で湿度依存性を明らかにし,実際の経年変化との比較まで進めることができた.湿熱処理条件が少ないので最終的な結論は待たなければならないが,計画した方法で成果が得られるであろうことが示唆された.また,所有していない測定機器についても,他機関の協力を得,順調に測定を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
湿熱処理によって明らかにされた温度・湿度依存性から,常温での変化を予測するためには,まだ処理条件が不足している.本年度着手できなかった他の処理条件についても湿熱処理を進め,予測の精度を上げる.また処理後の試料について,経年変化の物理的・化学的メカニズムを明らかにするため,各種測定を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
作業補助のための人件費を計上していたが,代表者と本テーマを卒業論文テーマとした学生のみで本年度予定していた作業を終えることができた.
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次年度使用額の使用計画 |
28年度の成果を利用して,29年度はより大規模に実験をおこなうため,作業補助の人件費として使用する予定である.
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