植物バイオマスから精製したセルロースではあるが、少量のヘミセルロースが堆積しているナノファイバーをエンドグルカナーゼで切断し、その重合度と残存ヘミセルロース量を評価した。エンドグルカナーゼはTrichoderma reesei由来のEG Iを用いた。このTrEGIは異種宿主発現によってタンパク質の収集ならびに精製を行ったものであり、セルロース以外の物質に対する加水分解活性は非常に低いことを確認済みである。セルロース基質を様々な酵素濃度で45℃、24時間振とうさせて糖化した。その糖化率、重合度変化ならびに残渣の成分分析を行った。TrEGIはセルロースの非晶領域を特異的に切断する酵素であるが、分解残渣のセルロース量と重合度の間に関係性は認められなかった。しかしながら、非常に興味深いことに重合度とマンノース量には相関性が認められた。この結果はグルコマンナンがTrEGIによってセルロースが切断される領域と相互作用していることを示唆するものであった。さらに、キシロースにもセルロースの重合度減少と関係性が認められた。これまでの報告によるとセルロースと直接相互作用しているのがグルコマンナン、その外側にキシランが堆積するモデルが提唱されている。したがって、グルコマンナンの溶脱とともにキシランも基質から遊離したため、重合度減少につれてキシロース量が減少したと思われる。次に、ATRアクセサリーならびに顕微アクセサリーを用いて、酵素分解残渣から赤外分光スペクトルを取得し、重合度や含有成分に対してPLS回帰分析を行った。その結果、非常に相関性の高い検量モデルが作成できた。決定係数を解析したところ、水酸基の伸縮振動とは無関係な赤外吸収バンドの関与が認められた。これは重合度の減少に関与するヘミセルロースが水素結合とは異なる結合様式でセルロースと相互作用していることを示唆していた。
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