研究課題/領域番号 |
15K18724
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
重藤 潤 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (70570852)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 植物ペルオキシダーゼ / リグニン / DHPs |
研究実績の概要 |
リグニンの構造・組成を決定し、リグニンの不均一性を生み出す要因の1つとして「リグニン高分子化を担う植物ペルオキシダーゼの反応特性」に着目した。これまで植物のリグニン構造、組成の制御機構は、モノマーの種類・供給速度や反応環境の面から議論され、その検証実験には、生体内での木化には寄与しない市販の西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼが使用されてきた。本研究は、リグニン生合成へ寄与することが証明され、かつ西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼとは明瞭な酸化活性の違いをもつシロイヌナズナの3種のペルオキシダーゼ(AtPrx2, 25, 71)、およびポプラペルオキシダーゼ(CWPO-C)を使用し、そのペルオキシダーゼの反応特性の違いから植物におけるリグニンの構造、組成の制御機構の解明を試みる。本年度は、各組換えタンパクを用いて試験管内でリグニンモノマーを基質とした重合物(人工リグニン)を合成し、収量および分子量の解析を行った。その結果、リグニン生合成に関与する植物ペルオキシダーゼは以下に示すようにリグニン形成に有利な特性をもつことが示された。 1. 試験管内での人工リグニンの合成実験…シナピルアルコールを基質とした際、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼに主に含まれるHRP-Cと似た活性をもつAtPrx53を使用した場合、重合物の産生が認められなかった。一方、リグニン生合成に関与するペルオキシダーゼを使用すると重合物の産生が確認された。 2. 人工リグニンの分子量解析…CWPO-Cを用いて作製したシナピルアルコール重合物をゲル浸透クロマトグラフィーによって分離したところ、摩砕リグニンとよく似た分子サイズ分布であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に概ね沿った研究を行うことができた。本年度、異なる植物ペルオキシダーゼから異なる性状の人工リグニン産生が確認できており、リグニンの構造、組成の制御機構の解明を目的とした次年度の研究計画の遂行に一定の目途が立った。
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今後の研究の推進方策 |
AtPrx2、AtPrx25、AtPrx71、CWPO-C, AtPrx53, 市販の西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼを介して産生された重合物についてそれぞれ、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI-TOF/MS)を用いた分子量解析を行う。また、DFRC法またはアルカリ性ニトロベンゼン酸化分解法によって結合様式の評価を行う。植物ペルオキシダーゼのリグニン形成能の違いを生じる要因についても検討し、知見を得て新たな研究の展開に繋げたい。成果は学会にて報告し、原著論文として公表する。
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