本研究は、汚染空気の酸化作用に対する樹皮タンニンの低減効果を明らかにすることを目的に実施した。期間を通して以下の成果が得られた。樹皮タンニンは、気相において二酸化窒素によるリノール酸の酸化を抑制する効果があった。また、この効果は単量体よりも重合物であるタンニンにおいて高いことが明らかになった。酸化作用の低減メカニズムを明らかにするため、タンニンと二酸化窒素の反応を検討した結果、タンニンは二酸化窒素を除去する機能があり、かつ単量体よりも重合物であるタンニンが高いことが分かった。タンニンの重合度と二酸化窒素除去能との関係を検討した結果、オリゴマーよりポリマーで除去能が高い傾向があったが、樹種によりその傾向に差があった。タンニンの二酸化窒素除去機構について検討するため、タンニンの構成芳香核のモデル化合物を用いて検討した結果、B環構成芳香核であるcatechol、pyrogallolは除去能があったが、A環構成芳香核であるresorcinol、phloroglucinolは除去能がなかった。このことからA環構造の水酸基は除去能に影響せず、B環構造の水酸基が重要であることが分かった。また、B環構成芳香核を比較したところ、pyrogallol型の芳香核が除去能に有利であることが分かった。また、B環構成芳香核の誘導体を比較した結果、電子供与性の置換基を持つ構造では除去能が増加し、電子求引性の置換基を持つ構造は減少することが分かった。このことから、B環芳香核の電子密度が除去能に大きく影響することが明らかになった。以上の結果から、タンニンの二酸化窒素除去能は、B環構成芳香核の電子密度を高める化学変換により向上できる可能性が示唆された。
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