研究課題/領域番号 |
15K18728
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
山本 洋嗣 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (10447592)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地球温暖化 / 気候変動 / 温度依存型性決定機構 / 遺伝型性決定機構 / 性転換 / 指標生物 / ギンイソイワシ / トウゴロウイワシ目魚類 |
研究実績の概要 |
本研究では、水温起因の性転換が生じやすいトウゴロウイワシ目魚類を指標生物として選定し、国内主要港湾部における地球温暖化の魚類の性への影響評価を最終目的としている。2016年度も昨年度に引き続き、既に性の高い温度依存性が証明され、遺伝型性判別マーカーであるamhy遺伝子が単離されているギンイソイワシを指標種として用い、国内各地における野生集団の性転換個体出現率を調査した。本年度は、9月から11月にかけて、東京湾(n=100)、三重県英虞湾(n=202)、和歌山県白浜周辺(n=96)、長崎県五島列島(n=274)の4調査地においてギンイソイワシ当歳魚を捕獲し、遺伝型性(XX or XY)および表現型性(卵巣 or 精巣)を照合し性転換個体を検出した。その結果、雄への性転換率(高温影響度)および雌への性転換率(低温影響度)は、東京湾では42.9%および0%、英虞湾では14.7%および4.0%、和歌山県では11.3%および11.8%であることが明らかとなった。五島列島のサンプルは現在調査中である。次に、雄性転換個体出現率が極めて高かった東京湾に着目し、水温と性転換の因果関係を検証した。性転換個体の耳石輪紋解析より孵化時期/性決定時期を推定した後、捕獲地周辺における水温情報と照合し両者の関係性を調査した。その結果、本年度の調査エリアの孵化時期水温が例年より高く、雄性転換個体の多くは高水温期に孵化していることが明らかとなった。今後、その他のエリアにおいても、検出された性転換個体の耳石輪紋解析を進め、水温と性転換の因果関係を調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内各地におけるギンイソイワシ野生集団の性転換率調査を行った。本年度はこれまで行ってきた東京湾と三重県英虞湾の2カ所に加え、紀伊水道(和歌山県)および五島列島(長崎県)において野生集団の性転換率調査を行った。計画段階では、九州エリアの調査地として鹿児島湾を予定していたが、五島列島でギンイソイワシの野生集団が安定して確認されたため、調査地として加えた。対象種を予定通りに捕獲し、雌雄の性転換率を算出することで、当該エリアにおけるギンイソイワシの性の高温影響度、低温影響度を評価することができた。また、検出した性転換個体の耳石輪紋解析と捕獲地周辺の水温履歴から、水温と性転換の因果関係も証明できつつあることから、概ね計画通り進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本課題で計画しているその他の調査地(若狭湾、駿河湾、響灘、鹿児島湾等)においても同様の捕獲調査を順次開始する予定である。東京湾、英虞湾、紀伊水道、五島列島においても継続して調査を行う。また、将来的に予想される地球温暖化や異常気象に起因した水温上昇・低下が、ギンイソイワシ野生集団の「性」へ与える影響を正確に評価するためには、水温が何度でどの程度雌雄へ性転換するのかを詳細に知る必要がある。昨年度までも孵化稚魚の飼育試験に取り組んでいるが、より詳細な試験を今後も継続する予定である。また、検出した性転換個体の耳石輪紋解析と捕獲地周辺の水温履歴から、水温と性転換の因果関係を引き続き調査する予定である。
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