研究課題
本研究では、水温起因の性転換が生じやすいトウゴロウイワシ目魚類を指標生物として選定し、日本沿岸部における地球温暖化の魚類の性への影響評価を最終目的としている。2017年度は昨年度に引き続き、飼育環境下で性決定機構の高い温度依存性(性決定時期の水温が高温=雄性転換率増加、低温=雌性転換率増加)が示され、遺伝型性判別マーカーであるamhy遺伝子が単離されているギンイソイワシHypoatherina tsurugaeを指標種として用い、国内沿岸部における本種野生集団の性転換個体出現率を調査した。本年度は東京湾(n=88)、三重県英虞湾(n=111)、長崎県五島列島福江(n=53)の3調査地で当歳魚の捕獲調査を行い、捕獲個体の遺伝型性と表現型性を照合することで性転換個体を検出した。その結果、雄性転換率(高温影響度)および雌性転換率(低温影響度)は、東京湾ではそれぞれ12%および2%、三重県英虞湾では20%および2%、長崎県五島では7%および0%であることが明らかとなった。東京湾では、2016年度調査においてその他の調査地ではみられない程の高い雄性転換率 (43%)が確認されていたが、2017年度の性転換率は2014および2015年度の結果に類似した低い値となった。また、耳石輪紋数から推定した2017年度東京湾捕獲集団の産卵時期およびその際の捕獲地周辺の実測水温と変動パターンは、同所における2014および2015年度の調査結果に類似していた。よって、2016年度に東京湾で確認された高い雄性転換率は、その年度に特徴的に観られた産卵時期の遅れとその結果稚魚が経験した高水温に起因するのではないかと推察された。さらに本年度は、東京湾で捕獲した親魚から得た稚魚を用いて再度水温別飼育試験を行い、水温と本種性決定の相関関係を再調査し、高温では雄の性転換感が誘起されることを確認した。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件) 図書 (1件)
General and Comparative Endocrinology
巻: in press ページ: 1-6
10.1016/j.ygcen.2018.03.013
Ecology and Evolution
巻: in press ページ: 1-8
10.1002/ece3.4148
G3 Genes Genomes Genetics
巻: 7(8) ページ: 2489-2495
10.1534/g3.117.042697