ノリは共存する細菌叢に選択的な影響を与え、その結果としてノリ養殖場において特徴的な細菌叢が形成されていると考えられる。そこで、スサビノリと細菌群の共存機構を理解することを目的とし、この仮説に対する実証試験を環境要因に依存しない室内閉鎖系で評価した。 ノリ養殖場から育苗ノリと海水を採取するとともに、ノリ養殖環境とは異なる海域の海水を採取した。これらの海水試料に、ノリの抽出液および表面をクエン酸で殺菌したノリ葉体をそれぞれ添加した後、室内培養を行い、培養前後の細菌叢の変化を16S rRNA遺伝子アンプリコン解析により調べた。 各海域から採取した海水ではFlavobacteriia、α-Proteobacteria およびγ-Proteobacteria が優占し、育苗ノリの表面ではFlavobacteriia が最も優占し、その割合は海水に比べて高かった。ノリの抽出液を両海域の海水に添加した区において、培養後の海水の優占菌群はγ-Proteobacteria であった。次に、殺菌したノリをノリ養殖場の海水で培養したとき、海水ではγ-Proteobacteria が優占したのに対して、ノリ表面ではFlavobacteriia が優占する傾向にあった。一方、ノリを養殖環境とは異なる海域の海水で培養したとき、海水およびノリ表面においてγ-Proteobacteria が優占し、Flavobacteriia は低い割合を示した。これらの結果から、育苗ノリの表面に優占するFlavobacteriia は、ノリ養殖場の海水からノリ葉体自体の影響を受け、選択されることが推察された。
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