近年、クルマエビ漁獲量の減少に伴い、種苗生産に使用する健全な親エビの確保が難しくなっている。そのため、陸上水槽で飼育した親エビを用いた採卵技術の確立が求められているが、交尾が十分に行われないことが問題となっている。水槽での交尾率が低い原因として水槽内で受ける様々なストレスの影響が疑われている。特に、給排水の落下音や振動の抑制によって、親エビの交尾率が増加することが報告されていることから、音や振動が親エビの交尾行動に影響を与える可能性があるが、小型陸上水槽で上記を試みた場合では交尾率は低かったことから、その影響の実態は不透明なままである。そこで、水中音と振動レベルが異なる陸上水槽で飼育したクルマエビの交尾率を比較することで、これらが親エビの交尾率に与える影響を評価し、親エビの育成に最適な音・振動条件の繁殖水槽を設計し、安定的な採卵を行うことができるかを実証することを目指した。 2015年度は、曝気の相違によって水中音と振動レベルが異なる水槽を設計した。2016年度は、設計した水槽を用いて、水槽サイズ、および水中音と振動レベルが異なる条件下でのクルマエビの交尾率を比較し、水槽サイズは交尾に影響を与える一方で、水中音・振動レベルは交尾に影響しないことを示した。このことから2017年度は研究計画を変更し、水槽壁の衝撃吸収性、および底質[アンスラサイト(破砕石炭)、サンゴ砂]が異なる条件下でのクルマエビの交尾率を比較し、親エビの育成に最適な水槽条件を検討した。2018年度は、2017年度までに実施した親エビの飼育実験結果のデータ解析を行い、継続的に高い交尾率が得られる飼育条件は、底質にアンスラサイトを用い、かつ水槽底面積が0.75m2以上であることを示した。
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