研究課題/領域番号 |
15K18738
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
入路 光雄 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 任期付研究員 (50732426)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 母性効果 / 年齢 / 小型浮魚 / 資源 / 母性mRNA / ミトコンドリアDNA |
研究実績の概要 |
雌親魚の年齢によって発現の異なる遺伝因子(親魚年齢マーカー)の発見を目指す本研究において、昨年度は若齢と高齢の雌マサバより排卵卵を採集して、IonProtonシステムによりシーケンスデータを得た。本年度はまず、それらシーケンスデータを解析した。若齢と高齢の雌マサバ各2尾のシーケンスデータをアセンブリしたところ、それぞれ約60,000のcontigを得た。クラスターデンドグラムを作成したところ、若齢と高齢の個体間ではグループは形成されなかった。発現量を比較解析した結果、若齢と高齢で発現量の異なる遺伝子が4個選定された。Blast検索により、それぞれ“GTPase IMAP family member 7”“Ependymin”“Collagen alpha 6”“FH1/FH2”と相同性の高い遺伝子であった。次に、各遺伝子の部分配列をもとに特異的プライマーを作成した。新たにマサバ卵巣よりRNAを抽出し、作成したcDNAをテンプレートとしてPCR増幅を行い、クローニングにより各遺伝子の塩基配列を決定した。今後は、real-time PCR用のプライマーを設計し、若齢と高齢の雌マサバの排卵卵における4遺伝子の発現量を定量する。 また、排卵卵中のミトコンドリアDNA(mtDNA)コピー数を比較するため、定量法の検討を進めた。定量に適する領域としてND1を選定し、real-time PCR用のプライマーを設計した。さらに、微量のDNAが抽出できる方法をいくつか比較することで、DNA回収率がよく、検量線が正確に描ける定量法を検討した。今後は、検体数を増やしてmtDNAコピー数を定量し、若齢と高齢の雌マサバによってコピー数に違いがあるかどうかを比較する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の大きな成果はまず、マサバ排卵卵の次世代シーケンス解析により、ESTライブラリを作成したことである。マサバは我国の水産重要魚種であるとともに、サバ類は世界的にも商業価値が高いため、本研究で得られた遺伝子配列のデータは今後も様々な研究に役立つものと期待される。本研究では、若齢と高齢の雌マサバから得た排卵卵におけるRNA-seqにより、年齢によって発現量の異なる遺伝子が4個選定された。いずれも、卵の内側を支持する構造タンパク質に関連する遺伝子である。解析は当初の計画に沿って順調に進捗しており、新規情報も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、母性年齢と相関があることが示された4遺伝子についてreal-time PCRによる定量法を確立するとともに、昨年度得た検体において、それぞれの発現量を定量する。同様に、mtDNAについても、本年度検討した定量法を用いて、コピー数を定量する。また、飼育系統の異なるマサバにおいても、同様の結果が得られるかどうか検討する必要があると考え、新たに養成した若齢と高齢の雌マサバより、排卵卵のサンプリングを計画している。検体数を増やして定量することで、母性年齢と相関のある遺伝子であることを確定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子解析に用いた試薬の一部について、所属研究機関に揃っていたものを使用したため、購入を必要としなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
検体数を増やすため、新たに養成マサバを採集する。サンプリングに伴う出張のため、旅費として使用する。
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