雌親魚の年齢によって発現の異なる遺伝因子(親魚年齢マーカー)の発見を目指す本研究において、本年度は高齢魚と若齢魚から得た卵におけるミトコンドリアDNA(mtDNA)のコピー数を比較する再実験を実施した。2017年6月の産卵期に、4歳と1歳の雌マサバにホルモン(生殖腺刺激ホルモン放出ホルモンまたはヒト胎盤性生殖腺刺激ホルモン)を投与し、排卵を誘導した。4歳と1歳の雌マサバそれぞれ2および5個体より、得た排卵卵を約100粒ずつチューブに分けて、1個体につき10チューブほどを凍結した。1個体につき50粒の排卵卵を対象として、1粒からDNAを抽出した。マサバmtDNAのND1領域を対象とした定量PCR用のプライマーを設計し、リアルタイムPCRによりmtDNAコピー数を定量した。2015年の解析では、2歳と6歳の雌親魚から得た排卵卵において、高齢魚の卵の方が若齢魚の卵よりコピー数が多かった。しかし、2017年の解析では、年齢による差は現れず、飼育群によって年齢との相関に違いが出ることが分かった。 本課題を通して、1) 次世代シーケンサーを用いたRNA-seqにより、マサバ卵に発現する遺伝子の塩基配列情報を網羅的に解読した。2) RNA-seqにより、高齢と若齢の親魚から得た排卵卵において、統計的に発現量に差のある遺伝子を特定した。3) ある親魚群においては、高齢と若齢の親魚から得た排卵卵のmtDNAコピー数に差が出ることが分かった。
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