研究実績の概要 |
マグロ属魚類コシナガは、クロマグロの幼魚と形態が似ているが、クロマグロよりも温暖な海域を好むと考えられている(e.g. Mohri et al., 2009)。本研究では、コシナガ資源の利用促進と持続的な利用を検討するため、1980年代半ばからの日本海の高水温期への移行に伴うコシナガ漁獲の変化を調べ、回遊や経験水温等の情報を提示することを目的としている。本年度は、漁業、市場、行政、大学関係者等に聞き取り調査を行った。また、水産大学校練習船の漁獲データをもとに、コシナガの産卵場形成について分析した。萩市との調査検討会、漁業関係者との意見交換会を開催した。日本海での最初のコシナガの漁獲記録(中村, 1969)は、1968年の若狭湾の定置網への入網とされ、その後、1994年に山口県での漁獲の事例が報告され(Itoh et al., 1996)、1995年から開始された同県蓋井島の定置網モニタリングではコシナガが継続的に漁獲されていること等がわかってきた(e.g. Mohri et al., 2013)。山口県でのコシナガ漁獲の増加に伴い、コシナガとクロマグロの幼魚期における形態的差異を知らせる取り組みが進み(e.g. 小林, 2004)、同県では混同がぼほ無くなったと考えられている。島根県では、1996年及び1997年にコシナガがクロマグロ幼魚として処理された事例(e.g. 田中ら, 1997)があるが、現在では、ほぼ区別されていると考えられていること等がわかってきた。生殖腺と耳石の解析に基づき日本近海でコシナガが産卵している可能性が指摘され(Itoh et al., 1999)、日本海では1999年、2004年の遠洋水産研究所調査船及び傭船による調査でコシナガ未成魚、2000年以降は水産大学校練習船の調査で稚魚が採捕されたこと等がわかってきた。
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