研究課題
ラビリンチュラ類は油滴形成、脂質蓄積能が高度に発達した海洋性真核微生物である。油滴内に蓄積される脂質は主に中性脂質であるトリアシルグリセロール(TG)およびステロールエステル(SE)である。油滴形成機構を解明する上でこれらの脂質代謝に関与する遺伝子を同定することは重要である。本研究によって、ラビリンチュラ類より新規のSE合成酵素およびTG分解酵素であるリパーゼを同定した。新規SE合成酵素遺伝子はラビリンチュラ類および海洋性のストラメノパイル生物群に特徴的に保存されており、これらの海洋微生物が進化の過程で独自に獲得したSE合成酵素であることが推測される。ステロールは甲殻類の養殖において重要な脂質性栄養素となる。SE合成酵素遺伝子を同定出来たことにより、ラビリンチュラ類を用いた有用ステロールの増産に繋がることが期待される。また、本研究で行った比較ゲノム解析により、ラビリンチュラ類に特有かつ新規性の高いリパーゼ様配列を見出した。これらの遺伝子産物の諸性質を調べた結果、従来のリパーゼでは見られないような、TGとリン脂質ホスファチジルコリン(PC)とで位置特異性が異なるというユニークな特徴をもつことが明らかとなった。ラビリンチュラ類は藻類などと比べて特殊な脂質組成を示すが、このような状況に対応すべく、特殊なリパーゼ遺伝子を保有していると考えられる。本リパーゼは塩耐性、有機溶媒耐性に優れ、比活性およびエステル交換反応効率も高い為、油脂産業への利用も期待できると考えられる。
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Journal of lipid research
巻: 58 ページ: 2334-2347
10.1194/jlr.M079897
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/kaishika/index.html