研究課題/領域番号 |
15K18741
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
古川 史也 宮崎大学, 農学部, その他 (80750281)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 転写因子 / 糖代謝 / yolk syncytial layer |
研究実績の概要 |
動物の初期胚では、母親由来の卵黄を利用して胚発生が進行する。しかし、様々な組織が未発達のこの時期では、どのように卵黄が代謝され、利用されているかは不明な点が多い。脊椎動物のモデル魚であるゼブラフィッシュを用いた先行研究において、卵黄を包む多核の細胞層yolk syncytial layer (YSL)で複数の代謝関連遺伝子の発現が確認された。これらの遺伝子の多くは、外環境の変化に応じて発現量を増減させることが分かってきたが、その調節機構は不明である。本研究では、YSLにおける代謝をつかさどる因子を探索することを目的とし、哺乳類等で明らかとなっている転写因子に焦点を当て、ゼブラフィッシュ胚での発現を検討した。まず、脊椎動物の肝臓で糖を中心とした代謝機構の調節に関わるとされる転写調節因子10種、アミノ酸への応答に関与すると考えられる遺伝子1種について、ゼブラフィッシュ胚での発現を確認した。受精後3時間後から120時間後まで、発生ステージごとに分けて発現量の変化を調べた結果、受精後に発現が上昇し、受精6時間後と18時間後にピークに達する遺伝子がそれぞれ3種と4種みられ、1種の遺伝子は発生が進むにつれ発現量が上昇し続けた。2種の遺伝子はサンプリング期間を通して、発現量がごくわずかであった。成魚の各組織における発現プロファイルを調べたところ、肝臓において5つの遺伝子の発現が確認された。 現在はin situハイブリダイゼーション法によりゼブラフィッシュ胚における各種遺伝子の発現部位の解析をすすめており、2種類の遺伝子がYSLに、1種類の遺伝子が表皮に発現していることを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように、いくつかの遺伝子に関してはin situハイブリダイゼーション法による発現部位の特定が進んでいるものの、多くの遺伝子については、その発現部位の特定に至っていない。今後、実験条件の改善等の検討を重ね、別実験と並行しながら再試行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で対象としている代謝調節に関与すると考えられる遺伝子群において、環境パラメーターの変化に対する遺伝子発現の変化を調べる。具体的にはまず、低酸素、低温、酸性環境にそれぞれ発生途中のゼブラフィッシュ胚を曝露し、代謝調節に関与すると考えられる遺伝子の発現変動を調べる。いくつかの候補遺伝子の発現量に変化が確認された場合、先行研究で明らかとなっている代謝酵素遺伝子の発現変化とともに、それらの酵素に対する基質または代謝産物の含量変化も確認する。 代謝の調節に関わると想定される遺伝子と代謝酵素遺伝子において、様々な環境刺激に応答して類似した発現パターンが確認された場合、調節に関わる遺伝子のノックダウンを行い、代謝酵素遺伝子の発現調節を行っている可能性を調べる。更に、環境刺激と遺伝子ノックダウンを組み合わせ、環境刺激を仲介する代謝調節因子を明らかにする。
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