昨年まで、脊椎動物成体の肝臓で発現する複数の転写調節因子をターゲットに実験を進めた。その結果、上記転写調節因子のホモログをコードする遺伝子が、魚類の胚において発現することを明らかにした。また、そのうちのいくつかの遺伝子が、外環境の変化に応答し、発現量を変化させることが明らかとなった。 上記の転写調節因子は、ゲノムデータベース上に登録されているものの、その全長塩基配列が不明なままであった。そこで今年度は、RACE法を用いてこの遺伝子の非翻訳領域(UTR)のクローニングを試みた。その結果、5’ UTRにおいて271塩基、3’ UTRにおいて683塩基の配列が明らかとなった。この遺伝子をターゲットとして遺伝子ノックダウンを試みたが、スプライシング阻害型のモルフォリノオリゴ(MO)が充分に作用しなかったため、今後は翻訳阻害型MOの使用を検討している。 上記の問題より、転写調節因子をターゲットとした研究は難航した。そのため、代謝を調節するもう一つの重要なファクターである内分泌因子にも着目し、この役割を検討した。通常、成体では様々な状況に応じて内分泌器官よりホルモンが分泌され、体内の代謝を調節することが知られる。この成体の代謝を調節する特定の内分泌因子に対する阻害剤を魚類の胚に作用させた結果、いくつかの主要な代謝遺伝子の発現が変化することが示唆された。このことより、胚発生の過程においても、その代謝は内分泌因子による調節を受けている可能性が考えられる。今後はこの内分泌因子に対する解析も継続する予定である。
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