研究課題
海藻や植物プランクトンの多くは、海洋中の塩ストレス環境に適応する為に、細胞内に浸透圧適合溶質を蓄積する。本研究では、海洋性藻類を用いてジメチルスルフォニオプロピオン酸 (DMSP)を含む浸透圧適合溶質の合成経路に関わる因子を同定・機能解析することで、合成経路の制御様式を明らかにし、その環境ストレス応答機構を解明することを目的とした。DMSPを細胞内に蓄積することが知られている珪藻 T. pseudonana を用いて DMSP 合成経路の責任酵素群の候補因子を得た。DMSP は、メチオニンを前駆体として 4 段階の反応段階を経て合成される。これらすべての反応段階を触媒する候補酵素群について機能解析したところ、1 つの反応段階を触媒する酵素を同定することができた。また、塩湖に生息する耐塩性シアノバクテリアにおける浸透圧適合溶質グリシンベタイン合成に関わる因子として、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼについても解析を行った。耐塩性シアノバクテリアからクローニングしたセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ遺伝子を導入することで、淡水性シアノバクテリアの塩ストレス耐性を向上させることができた。また、様々な生物で浸透圧適合溶質として機能する可能性のあるマイコスポリン様アミノ酸 (MAA) の機能解析を行った。耐塩性シアノバクテリアより、MAA の一種であるマイコスポリン 2 グリシンを精製し、この化合物が強い DNA 保護作用と抗酸化活性を有することを明らかにした。
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