研究実績の概要 |
本研究の目的は、①サンゴにおいてRNA干渉(RNAintereference, RNAi)という、特定の遺伝子の発現を抑制する手法を確立する事である。これまで、サンゴのチオレドキシン、蛍光タンパク質(Green fluorescent protein, GFP)をターゲットとして、サンゴのプラヌラ幼生、幼若ポリプを用いたRNAiを実施している。プラヌラ幼生に上記遺伝子のRNAi処理を行ったあと、real-time PCR、whole-mount in situ hybridizationにより、緑色蛍光タンパク質や、チオレドキシンのmRNAの発現量が低下する事を確認している。これまでの結果から、プラヌラ幼生においてはRNAi処理が有効であることがわかっている。また、チオレドキシンをターゲットにRNAi処理をしたサンゴでは、高温時の生存率が著しく低下することから、チオレドキシンがサンゴのストレス耐性に重要なタンパク質であることがわかった。GFPをターゲットにしたRNAi処理については、プラヌラ幼生、ポリプにおいて、その発現量が低下することが蛍光顕微鏡で観察により明らかになった。次に、サンゴー褐虫藻の細胞内共生に関わる遺伝子をターゲットのRNAi処理を行ったところ、サンゴが獲得できる褐虫藻数やサンゴ体内の褐虫藻密度に変化があることを確認した。このことから、RNAi処理が細胞内共生の解明にも有効であることが示唆された。また一方で、RNAi処理の効果に個体差があり、プラヌラ幼生から変態後成長が進むにつれて、この処理の効果が薄れることがわかった。これまでの成果を現在論文としてまとめている最中である。
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