研究課題/領域番号 |
15K18745
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
村下 幸司 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, 主任研究員 (60597649)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | レプチン / メダカ / リガンド / 受容体 / 欠損体 |
研究実績の概要 |
効率的に魚類養殖を推進するには,魚類の摂食・栄養素利用の調節機構に着目した技術開発が有効と考えられる。レプチンは食欲調節と栄養素の利用効率に重要な役割を果たす内分泌因子として知られている。しかし,魚類ではレプチンがどのようなメカニズムで栄養代謝を調節するのかは不明であり,応用研究を展開するには多くの基礎情報が不足している。そこで本課題は,効率的な養殖技術開発へ向けた基盤研究として,魚類レプチンが持つ摂食・代謝機能の解析を目的としている。平成27年度は,計画通りTALENを用いることでメダカレプチン2種(aとb)の遺伝子欠損体を作出した。また加えてCRISPRを用いたレプチン受容体欠損体も作出している。平成28年度は,それら欠損体を掛け合わせることでリガンド2種(レプチンaとb)の二重欠損体を作出した。受容体欠損体と合わせて摂食に関する予備的な表現型解析を実施したところ,野生型に比べていずれの欠損体も摂餌量の増大が確認され,特にレプチンab二重欠損体では摂餌量の増加がレプチン単独欠損(aもしくはbのみ)および受容体単独欠損よりも突出していた。本結果は,レプチンが既知の受容体以外の作用経路を持つ可能性を示唆している。このことから,平成29年度はより詳細な解析を可能にするため,リガンド2種の二重欠損体に受容体欠損体を掛け合わせることでリガンド・受容体の三重欠損体を作出したところである。また,これまでに使用していたHRM(High Resolution Melting)法を改良することで,これら遺伝子が欠損したヘテロおよびホモ個体のより簡便なスクリーニングを可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの解析からレプチンが既知の受容体以外の作用経路を有する可能性が示唆された。リガンド2種にその受容体を加えた三重欠損体を作出し,より詳細な解析が可能になったところであり,研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では,レプチンのリガンド2種(aおよびb)のみが欠損したメダカを作出し,その表現型解析を行う予定であったが,これらに加えて受容体の欠損体も作出した。また,それら遺伝子欠損体を用いた予備的な解析からレプチンが既知の受容体以外の作用経路を有する可能性が示唆された。このことから,より精緻に研究目的を達成するため,現在はリガンド2種に受容体を加えた三重欠損体を作出したところである。平成30年度は,本課題の最終年度としてこれまでに作出してきた遺伝子欠損体における摂食および代謝に関する表現型を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定では,H29年度はこれまでに作出済みの遺伝子欠損体(レプチンa,bおよびそれらの二重欠損)の表現型解析を行う予定であったが,より精緻な結果を得るためにさらにレプチン受容体を加えた三重欠損体をしたことから,次年度使用額が生じた(より精緻な結果を得るための研究計画の変更)。生じた次年研究予算は,これまでに作出した全ての遺伝子欠損体の表現型解析に使用する。
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