効率的に魚類養殖を推進するには,魚類の摂食・栄養素利用の調節機構に着目した技術開発が有効と考えられる。そこで本課題では,効率的な養殖技術開発へ向けた基盤研究として,摂食や代謝に重要な役割を持つ魚類レプチンの機能を調べることを目的としている。これまでに2種のレプチンリガンド欠損(AおよびB)にレプチン受容体欠損(R)を加えた3重欠損魚(メダカ)を作出してきた。今年度は,これまでに作出したレプチン関連遺伝子欠損魚(A欠損・B欠損・R欠損・AB欠損・ABR欠損)を用いて成長,摂食量,酸素消費量(代謝量の指標)の比較を行った。しかし,これら遺伝子欠損魚は,野生型に対してまたは各欠損体間においていずれの指標も差を確認することができなかった。これまでの研究によって,レプチン受容体欠損メダカは摂餌量が増大し,成長も早くなることが知られている。一方,本研究ではリガンドのみならず既報と同じ受容体遺伝子の欠損魚においても野生型との間に明瞭な差が確認されなかった。近年,他魚種(ゼブラフィッシュ)においても,別々の研究グループからレプチン受容体欠損魚の摂食量・成長の表現型について異なる結果(摂餌量・成長増加の有無)が報告されている。本研究で作出した欠損魚を含めて,これまでに報告されているものはいずれも完全な機能欠損が予測される変異を有するものではあるが,微妙な変異の違いによってその表現型も異なってくるのかもしれない。
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