研究課題/領域番号 |
15K18747
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
LUR PUANGKAEW 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30746524)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本産農林水産物・食品の輸出 |
研究実績の概要 |
本年度は,日本およびタイの政府・関係機関等が公表しているデータ・文献を収集・整理し,タイにおける日本産農林水産物・食品の輸入実態・動向を把握するとともに,原発事故後の日本産農林水産物・食品の輸入制度・規制の変化を明らかにした。その結果,以下のことが明らかになった。 第1に,日本の農林水産省「農林水産物等の輸出取組事例(2008年~2015年)」の各都道府県におけるタイ向けの日本産農林水産物・食品輸出の取組組織・経営体を整理した結果,当初では一部の都道府県において果実類を中心とした輸出が行われていたが,近年,タイに日本産農林産物・食品を輸出している組織・経営体の数は年々増加傾向にあるとともに,多くの都道府県において果実類のみならず,野菜類,畜産物,水産物,加工食品など,多種多品目の農林水産物・食品の輸出が積極的に取り組まれていることが明らかになった。 第2に,タイの関税局が公表している2007年~2015年までのタイの日本産農林水産物・食品の輸入量を集計・整理した結果,2011年では原発事故が発生したにも関わらず,多くの品目において輸入量は前年度と比べて増加していることが明らかになった。特に,水産物,酒類および加工食品では,原発事故後でも輸入量は大幅に拡大している。穀類と果実類については,原発事故の影響を受け,2011年の輸入量は減少に転じたものの,2013年では顕著な回復を示している。 第3に,日本の農林水産省とタイ保健省が公表しているデータを整理した結果,原発事故発生後から現在までのタイにおける日本産農林水産物・食品の輸入規制措置が5つの段階に分けられることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原発事故後のタイにおける日本産農林水産物・食品の輸入実態および輸入規制の変化を明らかにするために必要なデータ・文献を収集・整理することが可能であった上,研究協力者および関係者の理解・協力が得られたため,スムーズに調査を実施することができた。 また,研究実績の概要に記したことに加えて,原発事故後のタイにおける日本産農林水産物・食品の輸入規制の変化について,以下に述べることが確認された。 原発事故発生直後の第1段階では,タイに輸入される全ての農林水産物・食品について,区分ごとに日本の政府機関(地方自治体を含む)が発行する証明等を添付することが要求された(区分1:3月11日より前に収穫,加工された全ての農林水産物・食品,区分2:12都県(福島県,群馬県,茨城県,栃木県,宮城県,山形県,新潟県,長野県,山梨県,埼玉県,東京都,千葉県)で生産された全ての農林水産物・食品,区分3:12都県以外で生産された全ての農林水産物・食品)。第2段階では,規制対象となる全ての農林水産物・食品から「食品添加物,風味を調整する物質,食品を保存するために使用される物質」が除外されるとともに,放射性物質基準への適合証明を求められる都県が12都県から9都県に変更された。また,区分3の産地証明について,これまでの日本の政府機関(地方自治体を含む)発行の証明書に加え,各地の商工会議所が発行する産地が記載された原産地証明書も受け付けられることとなった。第3段階では,区分2の放射性物質基準の適合証明を求められる対象地域から東京都を除外された。第4段階では,食品添加物に合わせてアルコール飲料等の輸入規制が解禁されると同時に放射性物質基準への適合証明を求められる都県が8県から3県(福島県,群馬県,宮城県)に変更された。第5段階では,一部の野生動物肉を除き全ての農林水産省・食品の輸入規制が解禁された。
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今後の研究の推進方策 |
近年,日本からタイに輸入されている農林水産物・食品は多種多品目にわたっている。そのため,研究協力者と共同現地視察・実態調査を行い,日本産農水産物・食品の輸入に関わっている輸入業者,スーパー,外食産業の選定を行う。また、研究協力者と共同現地調査を実施するとともに,日本産農水産物・食品の輸入業者,スーパー,日本食レストランに対する聞き取り調査を行い,それぞれの主体の福島原発事故後の安全PR,安全確認・検査体制に対する対応行動,取り組みを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の研究費を活用し,本研究費での国内外での出張旅費を抑えることができたため。また,一部の調査対象輸入業者およびスーパーが繁忙であったために,これらの輸入業者やスーパーを訪問し,調査をする機会を確保することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の輸入業者やスーパーを研究協力者と共に訪問し,聞き取り調査を行う予定である。その調査のための出張旅費等に使用する計画である。
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