研究課題/領域番号 |
15K18749
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村上 智明 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (60748523)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 作業受託 / 粗飼料 / 酪農 / 計量経済分析 / GIS / GPS / 農作業効率 |
研究実績の概要 |
2015年度は根釧地域における粗飼料生産にかかわる基礎的な解析を行った。主な研究課題と成果は以下のとおりである。 第一に作業委託によって生産される粗飼料の品質に関する統計分析である。一部受託業者では作業が遅くなる受託先に対して晩生の品種を作付するような対応はとられていたが、それでも収穫適期内に作業を終了できる場合は少ない。多くの場合に統計的に有意な作業の遅れによる粗飼料の品質低下が観察された。また、コントラクターの受託面積増加に伴い、統計的に有意な品質低下も観察された。 第二に作業受託のマクロの作業工程評価である。受託業者の作業記録をもとにGISを用いて作業受託業者の一番草収穫作業全体の工程評価を行った。分析の結果から、i)受託業者の受託圃場間は大きく離れている場合も多く、分散錯圃の影響がある、ii)受託順番は委託先の作業時期に関する意向を受けて移動距離を最小化するようには出来ていない、iii)特に作業順が遅くなる時期に作業速度が落ちやすい、iv)TMRセンターからの受託を行っている受託業者では移動距離が最短化されたものに近い工程を組んでおり、作業終盤でも作業速度は落ちていないことなどが明らかとなった。 第三に作業受託のミクロの作業工程評価である。受託業者の作業機にGPSロガーの搭載することにより、個々の作業機がどの程度の効率性を持って作業工程を組むことができているのかを分析した。分析の結果から、i)計測事例がサイロと圃場が近接していたため作業全体ではハーベスター、飼料運搬用トラクターともに8割程度の時間稼働しており待機時間は少ない、ii)作業の後期ほど作業速度は落ちる、iii)特に飼料運搬用トラクターの待機時間は作業後半になると長くなるといったことが明らかになった。この結果は受託先ごとに同様の装備で作業を行う場合には、作業環境の違いによる待機時間の増加に伴い、作業効率が低下する可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作業受託業者の作成する粗飼料の品質については大まかな分析を終えることができた。 作業受託に関わる受託場所の分散・錯綜に関する評価については、少数の業者についてではあるが、どのような場合に非効率性があるのかを数量的に評価することができている。 分析結果についても学会報告3回及び論文投稿2編を行うことができており、概ね順調であるということができる。 衛星リモートセンシングによる地域内の土地利用の特定化も進めており、分析に用いるデータベースの構築も順調に行われている。
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今後の研究の推進方策 |
受託業者の作成する飼料品質が受託面積の増加に伴って悪化する要因について、委託元の飼料品質に関する評価と作業内容に関する情報の非対称性に起因するものを想定している。これについて明らかにするために、委託を行っている酪農経営の委託業者にかかわる評価方法についての分析を進める必要がある。 可能な限り委託を行っている酪農経営に対して個別の経営内容にかかわる情報収集をアンケート・面接調査によって集めることで、飼料品質の変化による産出への影響を把握する。 より多くの受託業者の作業工程に関する情報を収集し、受託場所の分散と作業順番の錯綜に関する実態の把握と、受託場所ごとの環境の違いに伴う作業効率への影響についての評価を進める。 分析にかかわるバイアスを少なくするために、草地更新等の分析枠組みに組み込めていない酪農生産性に影響を与える要因に関する解析も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった衛星写真について今年度解析分については別途入手することができたため物品費の使用額が少なくなった。 雇用費については、今年度のデータ処理は分析方法の確立のために自身ですべて行うこととし、雇用者への依頼は次年度以降にすることとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
GPSロガーの購入に充てる予定である。 また、今年度はデータ解析作業について当初予定以上に雇用を行う予定である。
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