栄養問題は最優先で取り組むべき地球規模の課題の1つであり、近年急速に注目度も高まっている。しかし、食糧増産の方針はあっても、具体的にどの作物の増産が人々の栄養改善に有効なのかは十分明らかにはされていない。本研究は、国家レベルでの栄養所要量(摂取すべき量)と栄養素供給量(摂取したと推定される量)を算定し、個々の栄養素の過不足を同定するアプローチを開発することを目的とする、栄養改善や食料安全保障の観点から食料政策への貢献と学術への貢献との両立を目指す研究である。 本年度は本研究の3年目にあたる。1年目は応募者の所属機関変更もあり少々進捗が遅れがちではあったが、2年目はデータ整理を行う研究助手を雇用したことも手伝い、順調な進展が見られた。マダガスカルを対象国と設定し、FAOの食料需給表の各カテゴリに含まれる品目や割合を仮定しUSDA等の食品成分表を用いて一人1日あたり栄養素供給量を推定した。一方、国の人口構成なども考慮して一人1日あたり必要栄養素量も計算し、栄養素の需給バランスを比較したところ、数種類の栄養素に関して不足がみられた。また、各栄養素の供給源を詳しく調べたところ、供給源に偏りがみられたため、アミノ酸スコア不足や微量栄養素の低い吸収率も見込まれた。これらの成果は、平成29年3月に行われた日本農業経済学会で発表された。3年目は更に、時系列変化の把握や他国との比較などを試み、人口の何%がその微量栄養素が不足した状態と考えられるかについても微量栄養素摂取量の分布を考慮して算出した。この3年目の成果の一部は、平成30年6月にイギリス・北アイルランドで行われる栄養学会にて発表する予定である。
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