研究実績の概要 |
本研究では植物根の吸水,窒素成分の吸収をポット試験と圃場調査から定量的に評価し,モデル化の上で,土壌・植物・大気連続系における水分・窒素循環を予測し,地下水硝酸汚染のアセスメントを行うことを目的としている.土壌中の窒素動態は土中水分移動に大きく影響を受け,その予測には植物根の吸水および大気への蒸散の評価が必要不可欠である.また,窒素の形態変化,つまり有機態窒素からアンモニア態窒素への変化(無機化)とアンモニア態窒素から硝酸態窒素への変化(硝化)について,反応速度を評価する必要がある.そこで平成28年度は,植物根の吸水とそれにともなう蒸発散を含む畑地の水分移動シミュレーションを行う上で必要なパラメータ類の推定,および無機化,硝化の反応速度定数の評価を行った. 平成27年度に続きダイズのポット栽培実験を行った.十分な潅水を行う湿潤ポットと,潅水間隔を長くし乾燥ストレスを与える乾燥ポットにおいて,土中水分量,土中水圧力,および蒸散速度の測定を行った.2つの蒸散速度の比と土中水圧力の関係から,土中水分量の減少にともなう植物根の吸水の低下を表す水ストレス応答関数を推定した.その結果,土中水圧力がおよそ-1,800cmからストレスを受け始め,およそ-16,500cmで吸水が0となるモデルが推定できた.また,室内の土壌インキュベーション試験において,アンモニア態窒素量と硝酸態窒素量を吸光光度計で測定し,反応速度定数の推定を行った.その結果,今回実験を行った三重大学附属農場の畑土の硝化速度定数は0.07/dであることが評価できた.
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