研究課題/領域番号 |
15K18758
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
澤田 豊 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60631629)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 津波 / 海岸堤防 / 洗掘 / 模型実験 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
地盤の液状化程度が津波の越流による海岸堤防裏法尻の洗掘に及ぼす影響を検討するために、小型アクリル水槽を用いた水理模型実験を実施した。地盤に上向きの浸透力を与えることで液状化を再現することができた。実験結果より、地盤の液状化が洗掘量に及ぼす影響は認められなかった。液状化していない飽和地盤では、お椀型の洗掘孔が時間経過に伴い拡大した。これに対して、液状化地盤においては支持力が大きく低下することから、越流開始直後、流体が地盤内に貫入する現象が観察された。その後の洗掘過程においても洗掘孔表面の不安定な挙動が確認された。最終的には、洗掘孔からボイリングが発生する等、飽和地盤とは大きく異なる洗掘機構であることが明らかとなった。また、液状化地盤では洗掘孔近傍の動水勾配が大きくなり、間隙水圧が上昇することから、地盤の不安定化を増大させる可能性が示唆された。 さらに本研究では、津波の越流による海岸堤防裏法尻の洗掘を定量化するために、粒子法(MPS法)による数値解析ならびに最大洗掘深の予測式を提案した。数値解析では、既往の侵食モデルに加え、新たに砂の再堆積モデルを加えた。数値解析と模型実験の比較をしたところ、洗掘形状の再現性においては、若干の課題が残るものの、洗掘深さの時系列変化は概ね一致し、数値解析の洗掘予測技術としての有効性が明らかとなった。また再堆積を考慮したケースでは、洗掘深さの予測精度の向上が認められた。最大洗掘深は、洗掘孔内に発生する定在渦の大きさとの関係性から推定する方法を示した。既往の大型模型実験の結果も使用して、両者の回帰直線を求めた。その結果,決定係数は0.9以上となり、最大洗掘深の予測式としての妥当性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度の当初計画で示した液状化地盤における海岸堤防裏法尻の洗掘を対象とした水理模型実験は概ね計画通りに実施した。さらに、平成28年度の計画で示した数値解析についても平成27年度中に一部実施した。したがって、現在の状況は当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究成果をとりまとめ、国際会議、国内学会での発表と学術雑誌への投稿を行う予定である。また、数値解析における予測精度の向上のために現モデルを改良する必要がある。さらに、洗掘対策工法を提案し、水理模型実験により実証する必要がある。今後は、これらの課題に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置であるアクリル水槽とその架台の製作費用が計画よりも抑えられたためである。この理由として、アクリル水槽の詳細設計にあたり、事前の数値解析を実施した結果、計画断面よりも小規模な断面でも本研究が遂行可能であることが判明したため、アクリル水槽およびその架台製作費用がが大幅に抑えられた。この費用を次年度の海外出張(発表および情報収集)に使用したいと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
国際会議(ギリシャでの洗掘・侵食の国際会議ならびにイギリスでの国際海洋極地工学会議)および国内学会(仙台市での農業農村工学会全国大会)の出張を予定しているため、全体の中で旅費や会議参加費の割合が大きくなる。さらに、今年度実施の実験のために小型間隙水圧計を追加購入する予定である。
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